【論文レビュー】ジョブ・クラフティングの認知次元と構成主義:石山(2023)
第三章も濃厚でスゴイです!ジョブ・クラフティング(以下JC)は、タスク、関係性、認知の三つの次元に分解できるのですが、石山先生は認知の次元を構成主義の観点から論じています。しかも、構成主義を心理的構成主義と社会構成主義とに分けて、丁寧に議論を深めておられます。一時期、構成主義(構築主義)を読み込んだ時があったので、この辺りの議論は胸熱でした。石山先生の解説が素晴らしいので、本章を読めば、構成主義にも詳しくなれます!
心理的構成主義と社会構成主義の違い
石山先生が構成主義を二つに分けて詳しく解説している理由は、Wrzesniewski & Dutton(2001)が両者の正しく棲み分けて論じられていないと考えられるからなのです。この点は高尾先生の2020年論文での注記でも触れられていて、その論文のnoteを書いたときに、石山さんからfacebookでコメントもいただきました。しかし正直に言えば、僕はそのときに理解できていなかったのですが(汗)、今回、この章を読んで理解できました!
両者は、世界は客観的に存在するのではなく構成(構築)されると捉えます。しかし、ピアジェを基底理論とする心理的構成主義が個人の心によって世界は構成されるとするのに対して、シュッツやルックマンの現象学的社会学を基にした社会構成主義は社会によって世界が構成される、と捉えています。すごく乱暴に一言で言ってしまえば、主体が個人か社会か、という違いのようですね。
認知JCの特徴
Wrzesniewski & Dutton(2001)は、心理的構成主義と社会構成主義とを正しく分けられていない可能性があるものの、両者が認知JCの基盤をなしていることには変わりはないようです。ただ、二つの構成主義を基にした認知JCの特徴はそれぞれ異なるようで、石山先生は以下のように整理されています。
先ほど扱ったように、個人を主体とした心理的構成主義と、社会を主体とした社会構成主義という特徴が認知JCにも影響を与えるようです。
仕事の有意味性とプロティアン・キャリア
認知JCの鍵概念には仕事の有意味性があります。先行研究を踏まえて、近い概念である「仕事の意味」は仕事を肯定的にも否定的にも中立的にも捉えるのに対して、仕事の有意味性は仕事を肯定的に捉えているとしています。
こうした仕事の有意味性を基盤にしたものは認知JCだけではありません。キャリア論ではプロティアン・キャリアにおいても仕事の有意味性はそのメタコンピテンシーとして位置付けられていると指摘されています。JCに関する記述からはやや逸れますが、私にとってはこの点は重要な学び(石山先生、触れていただいてありがとうございます!!)なので、備忘的に残しておきます。
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