【論文レビュー】JD-Rモデルの枠組みに基づいた先行研究をメタ分析した論文:Crawford et al.(2010)
JD-Rモデルの枠組みに基づいた研究をメタ分析した論文を読んでみました。メタ分析論文はそもそもモデルや概念を理解する上でありがたいものですし、本論文の場合には、仕事の要求度について峻別して知見をお届けしてくれるという特に興味深い内容でした。
従来のモデル
まず、本論文では仕事の要求度(Demands)と仕事の資源(Resources)がバーンアウト(Burnout)とエンゲージメント(Engatemen)にそれぞれどのような影響を与えるのかをメタ分析しています。
その結果図が以下です。
仕事の要求度からは、バーンアウトに正の相関があり(仕事の要求度が高いと認識しているバーンアウト傾向が高まる)、エンゲージメントには弱い負の相関があること(エンゲージメントは少し低くなる)がわかります。
他方の仕事の資源からは、バーンアウトに負の相関があり(仕事の資源が高いと認識しているとバーンアウト傾向が低下する)、エンゲージメントには正の相関があること(エンゲージメントは高くなる)が言えます。
仕事の要求度にも違いがある!
本論文が興味深いのは、仕事の要求度を挑戦的な要求度(Challenge Demands)と妨害的な要求度(Hindrance Demands)に分類して、バーンアウトやエンゲージメントとの影響関係をメタ分析している点です。両者についてざっくりとした意味合いを述べると、挑戦的な要求度とは個人の成長につながると認知される要求度であり、妨害的な要求度とは仕事の目標達成や成長を阻害すると認知される要求度です。
まず以下の図をご覧ください。
バーンアウトへの影響は両者ともに正の相関があります。仕事の要求度はバーンアウトと相関するということは言えそうです。若干ですが、挑戦的な要求度からの値が低いのは特徴とも言えるかもしれません。
大変興味深いのは、挑戦的な要求度と妨害的な要求度とでエンゲージメントへの影響が異なる点です。妨害的な要求度からは負の相関であるのに対して、挑戦的な要求度からエンゲージメントへは正の相関になっています。
実務の肌感には合う!?
挑戦的な要求度とエンゲージメントとが正の相関関係を有する、というのは仕事をしているとむしろ肌感に合う結果なのではないでしょうか?自分の成長にとって役立ちそうだなとか、少し困難だけど目標達成することでお客さまに貢献できそうだな、などと思えるような要求度であれば、仕事にやりがいを持てる、というのはイメージしやすいです。こうした実務の肌感に合う示唆を提供できる論文を書きたいものです。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!