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【読書メモ】「個人主義的な自己」から「関係性の中の自己」へ:『あなたへの社会構成主義』(ケネス・J・ガーゲン著)[第5章]

本章は、ミードヴィゴツキーフッサールなどのビッグネームが出てくるなかなか濃厚な内容です。ガーゲンがそれぞれを社会構成主義へとのつながりに特化して要約しながら説明してくれているという、お得感満載な章となっています。

社会構成主義の特徴を生成的な理論であるとして、三つの流れから生み出されたものであるとしています。

①ミード:シンボリック相互作用論

私たちは、言語や振る舞い方を自分の内側に生まれ持って保持していて、それを発揮するというわけではありません。他者との関わりの中である状況において適切な言動を学習し、お互いに意思疎通をして影響を与え合うというあり方を提示したのがG・H・ミードシンボリック相互作用論です。

考えること、知ること、信じること、自己を理解することなどはすべて、「個人」の心の中ではなく、関係においてはじめて可能になります。「心」は、社会的プロセスから切り離しては考えられないのです。
186頁

②ヴィゴツキー:文化心理学

二番目はヴィゴツキー最近接発達領域です。従来の学習観では、個人が教師から知識を移植されるというように捉えられていたのに対して、ヴィゴツキーは教師と生徒および生徒同士といった関係性から学習が生じると捉えました。

ヴィゴツキーは、学習の「場」は、人と個人の関係的行為の網の目に存在するものであり、大切なのは「共にする」ことだと考えました。人は、他者と共に活動する中で、比喩的な意味で「自己」の外側に足を踏み出し、他者のある側面を取り入れるのです。
189-190頁

③フッサール:現象学

現象学では、個人と事物との関係性の捉え直しが行われています。従来は、個人が事物や経験を認識するというように認識対象との分裂が前提でしたが、現象学的な捉え方では関係的な視点に基づいて自己と他者が結びついていると考えます。

現象学の著作は、関係的な見方を発展させる上で重要な意味をもっています。なぜなら、シュッツが主張しているのは、意識的な経験という、私たちが何よりも私的だと考えているものが、実は社会的な相互行為に由来しているということだからです。私的(個人的)なものは、公的(関係的)なものから切り離すことができないのです。
192頁

社会構成主義では対話を重視

ミード、ヴィゴツキー、フッサールの三巨頭が社会構成主義へと至る流れであると著者は評価した上で、それでもまだ自己と他者、内部と外部、個人と社会といった二分法をまだ引きずっていると総括しています。

二分法とは端的に言えば主客の分離です。関係性の中から自己を生成的に生み出すために対話主義が生み出され、この対話主義が社会構成主義の基底を為しているのです。


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