![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/87370970/rectangle_large_type_2_b6545989c32d2631eec1c82e3c632e7a.jpeg?width=1200)
【読書メモ】心理的契約を測るにはどうするか?:『日本企業の心理的契約』(服部泰宏著)
心理的契約とは「当該個人と他者との間の互恵的な交換について合意された項目や条件に関する個人の信念」(Rousseau 1989)と定義されるもので、書面等で外形的に締結するものではなく個人が組織に対して認識している心理的なものです。組織に勤めていると、外形的な契約内容には含まれていないものの、認識しているものが「裏切られた」と感じたりするものはありますよね。ざっくり言えば、それが心理的契約という概念です。
以前も本書を扱ったことがあるので、全体像についてご関心がある方は以下のnoteをご笑覧ください。
日本版「心理的契約」尺度の誕生背景
日本企業における心理的契約尺度といえば、本書で挙げられている服部先生のものが定番と言えます。本書によれば、尺度を作る際のコーディングでは、グレイザー+ストラウスのオリジナル版のグランデッド・セオリー・アプローチ(GTA)を活用されています。
心理的契約には、個人が組織に対して期待するものと、組織による個人への期待という二つのものがありますが、以下では前者を扱います。コーディングの結果、賃金、雇用、仕事内容、職場環境、昇進・キャリア、教育・訓練、仕事外、就業時間、評価、誠実な対応、という十のカテゴリーが生み出されています。その中でもキャリア意識と関連が強そうな、仕事内容、職場環境、昇進・キャリアの三つについて見ていきます。
カテゴリー:仕事内容
仕事内容は、二つの項目から成り立っているようです。「やりたい仕事の提供」では、社員側が意義を感じている領域で職務遂行できるかどうかという点が問われています。次に「これまでの経験を生かす機会の提供」では、特に転職の際のインタビューで合意したと社員側が認識している過去の職務経験が活かされるかどうかが問題となるようです。
カテゴリー:職場環境
職場環境では三つの項目が出てきています。①「適度に任せる」は権限以上に関するもので、社員側が仕事を遂行する上で必要な権限を持っているかどうかに関するものです。②「適切な配置」では、適所適材が実現しているかや公平な職務分担がなされているかが問われていると言えるでしょう。③「居心地のよさ」は、働く上で快適な雰囲気があるかどうかに関するものです。
カテゴリー:昇進・キャリア
このカテゴリーでは「能力や実力に応じた処遇」が項目として出てきています。インタビューの中では、年功序列や終身雇用への批判する文脈の中で語られていたと服部先生はされています。
尺度開発をする事前のプロセスで、どのようなコーディングが行われていたかを具に見ていくのも面白いものですね。