【読書メモ】信頼性と妥当性の関係性はどのように考えれば良いのか?:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)
『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』の5章では心理尺度における信頼性について、6章では妥当性についてそれぞれ解説されていました。どちらも単独で読むと理解できるのですが、いざ尺度開発論文で信頼性と妥当性について文章で初めて書こうとした時に頭の中が混乱しました。どうやらこのように両者を混同するのは私だけではないようで、本書の7章では「信頼性と妥当性の相互関係」というタイトルで両者の違いについて解説してくれています。
内的整合性と内容妥当性
なぜ信頼性と妥当性がこんがらがってくるのでしょうか。端的に言えば、信頼性の一側面である内的整合性と妥当性で一つの観点を形成する内容妥当性という二つを正しく理解することが必要なようです。
両者の関係性を理解する上で7章にある例示がわかりやすいので以下に引用します。
内的整合性と内容妥当性の両者について具体例で解説してくれるのは初学者にとって大変ありがたいものです。内的整合性の一つの指標であるクロンバックのα係数を担保しようとして複数の項目で似たような表現を用いすぎてしまうと、それである概念を妥当に測ることができているのかあやしくなってしまうということです。
難しいものですね。とはいえ、尺度開発するということは、少なくともこの両者のバランスをとったものを作成することが求められるのです。
測定項目の広さと質のトレードオフ
心理尺度で扱う概念を、どこまで広くできるのか、どこまで深く質を高められるのか、という二点はトレードオフにあると言われます。
最後に引用しているCronbachはあのクロンバックのα係数でお馴染みのLee Cronbachご本人です。勝手な印象論ですが、信頼性の代表的指標であるα係数を提唱したクロンバックさんが、妥当性とのバランスを仰っているようにも思え、趣深い一節に感じました。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!