
【読書メモ】心理尺度はどのように構成されているのか?:『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』(小塩真司編)
『心理尺度構成の方法 基礎から実践まで』の第2章のタイトルは「心理尺度の形式」です。社会人大学院の心理統計に関する基礎的な授業で扱われる、教示文、尺度の種類、リッカート法、などが丁寧に説明されています。授業を受けるとその時はわかった気になるのですが、実際に尺度を作ろうとすると理解があやふやだったりします。本書は、授業の復習教材や副読本としても最適な一冊と言えそうです。以下では第2章のポイントをまとめます。
教示文
アンケートに答える時、質問項目が始まる前に説明がきがありますよね?それが教示文です。
教示文とは、心理尺度に含まれる質問項目にどのように回答すべきかについて指示するものである
長すぎても回答者は飽きて真面目に回答しようとしなくなりますし、短すぎると回答方法がわからずに回答できなくなってしまいかねません。作成してみると明瞭簡潔に書くのがなかなか難しく、教示文ってけっこう大事なものなのです。
4つの尺度
統計の授業では絶対に扱う基礎中の基礎の内容として、4つの尺度水準というものがあります。それぞれ簡潔に内容がまとめられているのでポイントだけ下記します。
①名義尺度
名義尺度(nominal scale)は同じものと異なるものとを識別することが可能な尺度水準である。
たとえば性別や居住している都道府県などが名義尺度に該当します。
②順序尺度
順序尺度(ordinal scale)は同じものと異なるものとを識別可能であることに加え、その数値の大小関係が意味をもつ尺度水準であり、(中略)数値間の等間隔性が保持されておらず、数値の大小関係以上のことは分からないほか、四則演算をすることもできない。
本書では徒競走の順位で例示されていてこれがわかりやすいのです。つまり、徒競走において順位は意味を持ちますが、たとえば1位と2位の差と2位と3位の差は通常は異なりますよね。つまり、数値の大小に意味はありながらも間隔は示さないものが順序尺度である、ということです。
③間隔尺度
間隔尺度(interval scale)は同じものと異なるものとを識別可能であり、その数値の大小関係が意味を持つことに加え、数値間の等間隔性が保持された尺度水準であり、(中略)測定する特性が「ない」という状態を示す絶対0点が存在せず、数値の比例関係に言及することはできない。間隔尺度は数値の間が等間隔であるため、数値間の差の解釈が可能になる。
順序尺度との違いで言えば、数値間が等間隔であるので数値を足したり引いたりすることはできます。他方で、間隔尺度の例として挙げられる西暦をイメージすればわかりやすいのですが、絶対0点が存在しないので掛け算や割り算をすることはできません。
④比率尺度
比率尺度(ratio scale)は同じものと異なるものとを識別可能であり、その数値の大小関係が意味を持ち、数値間の等間隔性が保持されていることに加え、絶対0点を持つ尺度水準であり、(中略)比率尺度での0の値は測定された特性が「ない」ことを意味するため、数値の比例関係に言及することができる。
本書では比率尺度の例として長さや重さが挙げられていますが、間隔尺度との違いである絶対0点があるためAさんが2歳の時の体重は1歳の時の体重の○倍である、といったことを示すことができます。
リッカート法
心理尺度にはいくつかの種類がありますが、最もよく使われるものはリッカート法だと本書ではされています。
リッカート法はR. Likert(1932)によって提案された方法であり、質問項目の内容に対して「全く当てはまらない」から「非常に当てはまる」などの選択肢のうち最も自分に当てはまる選択肢を1つ選んでもらうことで測定を行う方法である
上の引用箇所を読むと、企業でのアンケート調査の多くがリッカート法であることに思い至るのではないでしょうか。リッカート法では複数の選択肢が設定されていますが、本書での先行研究では5つから7つが推奨されているとしています。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!