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【論文レビュー】看護職向けの職務特性尺度開発:駒形ら(2021)

組織においてアサインされた職務の特性がどの程度動機付けられやすいものかどうかを測定する尺度として、職務特性尺度(Job Diagnostic Survey:JDS)というものがあります。日本では、田尾先生(京大名誉教授)が翻訳されたものが有名で私も最初の修士時代の研究で活用させていただきました。本論文は、その職務特性尺度を看護職向けのものとして翻訳して尺度開発を行ったものです。

駒形万里絵, 武村雪絵, 市川奈央子, 竹原君江, & 國江慶子. (2021). 日本語版職務特性尺度の開発- 看護職における信頼性・妥当性の検証. 日本看護管理学会誌, 25(1), 12-19.

信頼性の検証

まず内的一貫性については、全ての下位尺度でクロンバックαが0.7以上であることを確認し、内的一貫性があると判断されています。

また、再現性について、各下位尺度の級内相関係数(Intraclass correlation coeffi- cient: ICC)を算出し、目安となる基準である0.7を下回る0.6台のスコアが出ています。その上で、このスコアであっても、Landis and Koch(1977)の基準ではかなりの一致(substantial)があると判定されることから,最低限の再現性は有すると結論づけています。

妥当性の検証

探索的因子分析の結果は4因子モデルとなっています。(下表)

駒形ら(2021)p.16

しかし、確証的因子分析の結果、4因子モデルよりも5因子モデルの方が適合度が高かったため、5因子モデルで因子妥当性が確認されたと結論づけています。

駒形ら(2021)p.17

加えて、職務特性理論や先行研究との整合性から、基準関連妥当性が確認できたとしています。

尚、確証的因子分析(確認的因子分析とも訳されます)については、ビジネスリサーチラボの能登さんのコラムが非常にわかりやすいのでリンクを貼っておきます。過日、とある場で法政の石山先生とお話ししていた際にご紹介いただきました(ありがとうございました!!)。

感想

正直な感想としては、1970年代に提示された職務特性尺度が、1980年代には翻訳尺度としても出ているのに、2020年代に改めて尺度翻訳されて研究になるのだなぁと驚きました。超メジャーな翻訳された尺度であっても、対象を絞る理由が明確で、その対象における妥当性が不十分な場合には、改めて尺度翻訳の研究になるのですね。

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