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【読書メモ】『仕事のアンラーニング』(松尾睦著)

経験学習およびアンラーニングを改めて学ぼうと松尾先生の『仕事のアンラーニング』を読み直しました。再読してみると、以前、気づかなかったことが多いことに驚きますが、読み応えのある名著というものはそういう存在なのかもしれません。

ディープ・アンラーニング

本書の主題はアンラーニングです。このアンラーニングを実施するためには経験学習が肝になると松尾先生はしています。その上で、経験学習には4つのレベルがあると解説されています。

【経験学習レベル0】
そもそも、経験から教訓を引き出せていない
【経験学習レベル1】
過去の教訓に固執し、新しい教訓を引き出せない
【経験学習レベル2】
基本スタイル(信念・ルーティン)は変えずに、知識・スキル・テクニックについて教訓を引き出している
【経験学習レベル3】
教訓を引き出して、基本スタイルをアップデートしている

p.18

このうち、本書でアンラーニングとされているのは【経験学習レベル3】であり、この状況を中核的アンラーニング(ディープ・アンラーニング)と呼んでいます。仕事の日常においては【経験学習レベル2】である表層的アンラーニングを行うことをベースにして、節目でディープ・アンラーニングを目指すことが大事だとされています。職場における現実的な対応を示唆してくださっていると考えられます。

アンラーニングのきっかけも7:2:1

よく企業研修の中で人が成長する要素として7:2:1の法則というものが教えられます。7:2:1=経験:フィードバック:研修という割合で人は成長するというものです。この数値についてはその後の調査で異論も出てきていますが、まあ細かいことは気にせず、一旦は7:2:1の法則(ロミンガーの法則)を受け止めます。

本書ではこの7:2:1がアンラーニングのきっかけにおいても当てはまるという興味深い指摘をしています。

 アンラーニングのきっかけとしては、昇進・部門異動・問題の発生・家庭の事情など「状況の変化」が最も多く71・3%、次に上司・同僚・部下・取引先などの「他者の行動」が18・9%、そして研修・勉強会・書籍等の影響が9・8%でした。

p.36

最初の項目が経験的なもの、次の項目が他者とのやりとり、最後の項目が座学といえますので、ロミンガーの法則とすごく似ていることがわかりますね。ある意味では覚えやすい値といえます。

アンラーニングを促す個人要因

ではアンラーニングを促進する要因には何があるのでしょうか。まず個人要因としては、学習志向(学びを重視するマインド自己変革スキル内省批判的内省、という三つがあるとしています。

これらの関係性においては学習志向が起点となっています。学習志向が自己変革スキルを促すという関係がまずあります。次に、学習志向が内省を媒介して批判的内省あるいは内省を経由せずに直接的に批判的内省に影響する、というプロセスを明らかにされています。

アンラーニングを促す状況要因

ここまでは個人要因を扱いましたが、アンラーニングを促す要因には状況要因もあることを検証しています。具体的には、上司の探索的活動(革新的行動)という上司要因と、昇進という経験的な要因とがあるという指摘です。

個人要因と状況要因とを合わせて検討することで、職場における個人のアンラーニングを促すことができる可能性が高まりそうです。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!


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