【徹底解説】キャリア構築理論とは何か?(1)理論的背景:Savickas(2013)
研究上の必要があり、キャリア構築理論の論文を読み返しています。少し前には理論勉強会でも扱い、LDCアルムナイメンバーとの『サビカス キャリア構成理論』の読書会でもこの理論を取り上げましたが、記憶とは儚いものでだいぶ忘れています。この際、徹底的に理解を改めるためにSavickas(2013)を何回かに分けて解説してみます。極めてマニアックな内容のため、研究者以外の方は読まない方が良いと思うので先に書いておきます(笑)。
キャリア構築理論が説明するもの
まず最初にキャリア構築理論の射程範囲についてサビカス先生が説明している箇所を見てみましょう。
「個人が自分自身を構築」とありますが、ここにサビカス先生が構成主義に基づいてキャリア構築理論を提唱したと言われる所以があると言えます。
心理的構成主義と社会構成主義
さらに深掘りしていくと、サビカス先生がキャリア構築理論の背景理論としての構成主義をどのように捉えているかに関する説明があります。
どうやらサビカス先生は、キャリア構築理論のバックボーンにある広義の構成主義について、心理的構成主義(constructivism)と社会構成主義(social constructionism)の二つともに含んでいると捉えているようなんです。
心理的構成主義と社会構成主義との相違は、ジョブ・クラフティングのオリジナル論文として名高いWrzesniewski & Dutton(2001)について詳説されている高尾先生の論文の脚注に詳しいです。本論文と関わるところだけ引用しますが、詳細はぜひ原典を参照してみてください。
Savickasの構成主義は社会構成主義重視!?
ではサビカス先生は両者をどのように位置付けているのでしょうか。もちろん両者ともに背景理論にあたる構成主義として位置付けているので重視しているとはいえ、そこには強弱があります。続く文にそのヒントがあるようでうです。
キャリアを発達として内側から捉える(キャリア成熟)というのは彼の師匠であるスーパーの晩年の考え方でしたが、それをキャリア構築という考え方にサビカス先生は発展させています。そのため、内側から環境を眺めて解釈するというよりも、環境に適応するために働きかけるという能動性を重んじながらその過程で捉えられる相互作用によってキャリアを意味づける、という社会構成主義に重きを置いているように考えられます。
この辺りの心理的構成主義と社会構成主義の考え方の相違については、深尾(2005)に詳しいのでご関心のある方は以下をどうぞ。
実はここまで本論文のたった1ページを扱っただけだったりします。真剣に読み直してみると、すごいことが書かれていることに気づくものなのですね。数日後に、本論文の続きの部分を解説してみようと思います。
あとがき
いつにも増してマニアックなnoteを書こうと思ったのは、一つは執筆中の論文の関係もあるのですが、もう一つは先日お会いした学生さんとの会話がきっかけです。キャリア・アダプタビリティを扱っているその方の理解の深さとツッコミの的確さに驚き、身が引き締まる思いでした。
そのため、なんとなく理解しているつもりだったキャリア構築理論やキャリア・アダプタビリティをもう一度徹底的に読み込み、理解を上塗りしようとしているのが意図です。というわけなので、研究者以外の方はこのシリーズを読んでも人生にもキャリアにも活きないと思うので念押ししておきます(笑)。