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【論文レビュー】ソーシャル・サポートと離職意思の関係における職務満足と組織コミットメントの媒介効果の検証:厨子・井川(2012)

周囲の支援をソーシャル・サポートという概念で用いて心理学や経営学では研究がなされます。本論文では、ソーシャル・サポートの中でも上司による支援に着目し、ソーシャル・サポートが社員の離職意思とどのように関係するのかについて、職務満足組織コミットメントが媒介する関係性を実証しています。

厨子直之, & 井川浩輔. (2012). ナレッジワーカーのパフォーマンス・マネジメント―ソーシャル・サポートと離職の関係における職務満足・組織コミットメントの媒介効果―. 経営行動科学, 25(2), 113-128.

ソーシャル・サポートの定義

ソーシャル・サポートにはさまざまな定義があるということについては以前のnoteでも扱いました。本論文では、先行研究をもとに以下のような定義に基づいて扱っています。

「ある人を取り巻く重要な他者(家族,友人,同僚,専門家など)から得られるさまざまな形の援助(support)」(久田,1987,170 頁)

p.114

この定義に則った上で、調査においては、小牧・田中(1993)が用いている情緒的サポート道具的サポートの2次元から構成される尺度を用いています。

分析モデルと結論

本調査では、ソーシャル・サポートから離職意思への影響を見るために、職務満足および組織コミットメントを媒介変数として設定して分析モデルを構築しています。文字でつらつらと書かれるよりも、図を見た方が早いと思いますので以下に貼ります。

p.119

ソーシャル・サポートから職務満足への関係(仮説1)、ソーシャル・サポートから組織コミットメントへの関係(仮説2)、ソーシャル・サポートから職務満足を媒介した離職意思への関係(仮説3)、ソーシャル・サポートから組織コミットメントを媒介した離職意思への関係(仮説4)のいずれも支持されたというのが本論文での結論です。

どちらとも完全媒介効果あり

ややマニアックな内容に入っていきますが、興味があるのは媒介効果がどの程度あったのか、という点です。結論から言えば、職務満足および組織コミットメントの両方において完全媒介効果があったと解釈できます。

以下に職務満足の媒介効果と、組織コミットメントの媒介効果についての表を貼っておきます。

p.123
p.124

どちらとも媒介変数が重回帰式では独立変数の結果変数に対する関係性が有意ではなくなっていることが読み取れます。きれいに結果が出ているケースですね。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!

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