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【読書メモ】キャリア・ケースの検討:『サビカス キャリア構成理論』(マーク・L・サビカス著)第7章
サビカス先生の『サビカス キャリア構成理論』の最終章(第七章)では、第三章から第六章までで扱った四人のケースをCCT(キャリア構築理論)の枠組みに準拠しつつも、機械的に当て嵌めるのではなくリッチな質的データを最大限に尊重して解釈しています。複数時点でヒアリングされた質的な縦断調査であり、かつ両親などの他者にもヒアリングを行った結果の考察なので、読み応えのある考察です。とはいえ、本章だけを読むのでは咀嚼しきれないと思いますので、第三章から第六章までを読んだ上で読むことをお勧めしたい章です。
幼少期の親との交流がキャリア構築に影響
嫌な人にとっては読みたくない部分なのかもしれませんが、幼少期における家族、とりわけ親との関係性や相互作用が将来におけるキャリアの物語に影響を与えることが四人のケースに基づいて考察されています。母親と父親とで、その与える影響の内容は異なると結論づけています。
まず母親との交流は、幼少期以降の社会との関係、具体的には、自分自身との関係(ジェイムズ流に言えばIとme)や周囲の他者との関係に影響を与えているとしています。これ、個人的にはすごくよくわかるというか共感しかないんですよね。①他者一般に対しては淡々と対応(好きも嫌いもない)、②コミットしたい相手とは長く関係性をメンテ、③他人は他人で自分は自分だから我が道を行く、という私の社会的スタンスは、母のスタンスの影響なのだなぁと勝手に納得しながら読みました。笑
次に父親との交流は、のちのキャリア形成と職業行動に影響を与えると解釈しています。こちらも個人的に味わい深いです。私が長子で男だったということもあったのか、休日に外で遊ぶ際のメインは私であり、よく遊んでもらいました。こうした体験は、キャリアを築いていく上での自己確信につながっていると思います。また青年期以降はずっと反面教師的に捉えてしまいましたが、この結果として、父親以外の年上の男性であるロールモデルを探すという探索行動と関係構築行動に繋がっています。大学以降の先生や、社会人以降の上司や先輩に私は恵まれてきたと思いますが、これは、私がロールモデルを探し出そうと意識して行動してきたからなのかもしれません。
キャリア・アダプタビリティの開発
何らかのライフキャリアにおける目標に向けた対象として、①やりたいことに焦点を当てるのか、②やるべきことに焦点を当てるのか、という違いがあるとCCTでは説明しています。①は促進(本書では「昇進」と訳していますが、原著では「promotion」なので促進が妥当と判断)で、②は予防に動機付けられていると捉えます。
四人のケースからの解釈としては、①と②にバランスよく動機付けられているとキャリア・アダプタビリティの四次元も開発される、としています。第三章のロバートさんが良い例です。他方で、どちらかに課題があるとうまく開発されないケースがあるとしています。たとえば、うまくいかないことを恐れて「やるべきこと」に焦点を当てるという②予防ばかりを重視して行動すると、将来に対する関心や今やっていること以外への好奇心の開発の機会が失われる、といった具合です。
多様な個人の多様なキャリアを理解するCCT
キャリア・アダプタビリティという心理的資源がゆたかに開発されていると、キャリアを切り開く可能性と質は高まるでしょう。しかし、それは良い悪いとは全く別の話です。特に、カウンセラーとして他者のキャリアの物語と接する場合には、価値判断は避けた方が良いでしょう。
そうした際に、CCTを一つの枠組みとして、他者のキャリアの物語に耳を傾けて、その背景や意図を理解するきっかけができます。さらに、サビカス先生は、CCTがしっくりこない場合は他のキャリア理論に基づいて解釈することも勧めています。当て嵌めるというスタンスではなく、他者を人としてまっとうに理解するために、CCTをはじめとした理論を用いたいと改めて感じました。