【論文レビュー】ソーシャル・サポートとワーク・エンゲージメントとの関係性について:髙谷・安保(2022)
組織における周囲から支援されているという認識のことをソーシャル・サポートと呼びます。本論文では、医療機関で働く職員の方々が認識するソーシャル・サポートと、ワーク・エンゲージメントとの関係性を明らかにしています。
JD-Rモデル
ソーシャルサポートとワーク・エンゲージメントとの関係性を明らかにする上で著者たちがベースにしているものはJD-Rモデルです。
JD-Rモデルは研究蓄積によってモデルが拡張・充実してきていて、直近ではたとえばBakker & Demerouti(2016)のモデルが有名です。仕事の資源と個人の資源とがお互いに影響を与え合いながらワーク・エンゲージメントや組織コミットメントに影響を与えるとしています。本論文ではこの部分のうち、仕事の資源としてソーシャル・サポートを位置付けて、ワーク・エンゲージメントとの関係性を見ている、という調査デザインです。
本研究の特徴
本研究の対象は医療機関で働く看護師長と看護職員です。先行研究での課題提起を基にして、看護師長が看護職員に対して提供しているという認識しているソーシャル・サポートと、受け手である看護職員が認識しているソーシャル・サポートとにはギャップがある可能性があるとしています。
そこで、両者を切り分けて調査を行い、検証結果を明らかにしています。どちらか一方の自己評価だけに依存しないという点が本研究の特徴の一つになっているようです。
結果概要
ワーク・エンゲージメントはUWES-Jで測定していて、看護師長からのソーシャル・サポートの下位次元および看護職員(同僚)からのソーシャル・サポートの下位次元の全てとポジティヴな相関関係があることが明らかになりました。
その上で、看護師長および同僚である看護職員からのソーシャル・サポートに対して肯定的な認識がある看護職員は、ワーク・エンゲージメントが高い傾向があると結論づけています。つまり、ワーク・エンゲージメントという個人の職務に対する認識に対する働きかけるためには、個人への働きかけと共にその周囲にいる上司や同僚に対する働きかけもまた重要である、という実践的示唆を提供していると考えられます。
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