【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントの関係性:Nyathi & Oosthuizen(2023)
キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントとは正の相関関係があることが先行研究でも言われています。キャリア採用/入社が日本の雇用社会ではメジャーではなかった時代には両者が関係することは意外に思われたようです。しかし、日本においても堀内先生と岡田先生が2009年の論文でキャリア自律と組織コミットメントとの関係性が検証された頃から、まあ関係性はあるよね、という感じになってきていると思います。
キャリア自律と組織コミットメント
キャリアのワークショップを社内で企画すると、「寝た子を起こすのではないか」「離職を促すのではないか」といったことが言われる時代がありました。このような誤った印象が、今から遠くない過去には日本企業では一般的だったと言えます。
このような誤解を解いた実証研究が冒頭で言及した堀内・岡田論文です。過去にnoteでまとめたことがあるので、ご関心のある方は以下をご笑覧ください。
属性による違い
本論文でも先行研究と同様に、キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントとが正の相関関係を持っていることが検証されています。その上で、いくつかの属性に合わせてどのような差異があったのかを明らかにしています。
南アフリカの投資業界というなかなか限定的な調査対象ではありますが、興味深かった点を箇条書きで抜書きします。
年齢
キャリア・アダプタビリティの下位次元のうち好奇心のみが年齢ごとに相違があったとしています。なお、組織コミットメントについては組織コミットメント全体と情緒的、継続的、規範的の下位三次元全てで有意な差があったと報告されています。
性別
男女差については、キャリア・アダプタビリティの下位次元である関心と統制の二つで差異があったとしていて、組織コミットメントでは差異がなかったとしています。
学歴
関心、統制、自信の三つの次元で有意な差があったとしています。色々とみている属性の中でも最もキャリア・アダプタビリティの下位次元で有意差が出ている項目となっています。
実践的示唆
これらの結果を踏まえて実務における示唆として著者たちはいくつかのポイントを提示しています。まず年齢については、若いうちに人事異動やメンタリング施策を導入することで社員の好奇心を広げるようにすることが重要だ、としています。
次に性別については、まずどちらに対してもキャリア・カウンセリングやガイダンスのプログラムを提供することが大事だとしています。その上で、性別によらず公平性が担保できる施策を提供することが必要だと結論づけています。
最後に学歴については、学歴云々というよりも社員が生涯にわたって継続学習できるような環境の構築が大事であるとしています。それによって専門性を強化し続けることがキャリア・アダプタビリティを高めることに繋がり、結果的に組織コミットメントも高まる、というロジックを示唆しています。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!