【読書メモ】道を探す人の冒険:『サビカス キャリア構成理論』(マーク・L・サビカス著)第5章
コロナ禍以降、YouTubeをよく見るようになったのですが、他者のライフキャリアについて深掘りする番組が好きです。子供の頃に好んで読んでいた書籍も伝記が多く、最初に買った本は徳川家康の伝記です。誰が誰を好きとか嫌いみたいな週刊誌ネタには興味を持てないのですが、人が何を大事にしてどのように生きるのかというテーマが昔から興味があったような気がします。長い前置きですが、サビカス先生の『サビカス キャリア構成理論』の第五章では、第三章、第四章に続いて三人目のケースが描かれていてライフキャリアが深掘りされています。ほぼほぼ共感できないタイプの人生とキャリアを歩んでいる方ですが、物語としては大変興味深く読めました。
キャリア発達
三人目のケースで取り上げられているポールさんは、幼少期に最愛の母と死別し、反面教師になる厳しい父親と子供嫌いな家政婦という、身近な大人に愛されない環境で育っている様が描かれます。この時点で共感できない(と書けるということは私は恵まれているのでしょう)のですが、無茶苦茶興味深いのですよね。
こうした環境下の方が必ずこうなる!というわけでは全くないのですが、ポールさんは周囲の同世代の友人関係に冷淡で、年上の男性に指導を仰いだり、交友関係も年長者が多くなったとしています。かつ、そうした関係性はよく言えば多様であり、悪く言えば長く継続はしないという意味合いで社交性を発揮するタイプであり、多動型の人物として描かれています。
キャリア対処行動
こうした意味合いでの多動型のタイプが取るキャリア対処行動は、試してみることを重視したものになるとサビカス先生は解釈しています。実際、ポールさんはキャリアチェンジを繰り返し、複数の仕事を経験しています。これは、反面教師であった父親から一つのことをコツコツとできず次から次へと他のものに目移りすることを否定的に言われていたことへの反発なのかもしれません。
このようなキャリア対処行動については、半分は共感できる部分があると思いながら読みました。私も転職を多く経験していますが、職務はあまり大きく変えず、組織を変えています。職務と組織のどちらも変えるポールさんとの相違を考えると、自分自身のキャリア観を考える上でとても参考になる部分があるように思います。
キャリア・アダプタビリティでの解釈
ここまで個人的なことを中心に書いてしまいましたが(それがキャリア・ケースを読む醍醐味とも言えます)、概念的な観点で最後にまとめます。サビカス先生は、本章でもキャリア・アダプタビリティに基づいた解釈を行っています。
まず、ポールさんが現在という時間軸から自身の人生を捉える傾向が強く、将来に向けた関心や好奇心はほとんど示されなかったとしています。他方で、何らかの深刻な課題が生じたときであっても、独力で対応できるという自信や対応するために統制することに強みを発揮しているとしています。通常、キャリア・アダプタビリティは定量的に把握してしまいがちなのですが、インタビュー結果をもとにした当て嵌めについても学びになります。