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【論文レビュー】日本人のワーク・エンゲージメントはなぜ低いのか?:Shimazu et al. (2010)

日本が本国の企業であれ、外資系企業であれ、同じ企業グループで多国間でビジネスを連携しながら進めている企業に勤めていると、国や地域によってサーベイへの回答が異なることを体感できます。いわゆる文化差と呼ばれるものです。ワーク・エンゲージメントも同様で、日本で測定するとスコアが低くなることがよく言われており、実務の感覚にも符合します。本論文では、なぜ日本人のワーク・エンゲージメントが低いのかを考察しています。

Shimazu, A., Schaufeli, W. B., Miyanaka, D., & Iwata, N. (2010). Why Japanese workers show low work engagement- An item response theory analysis of the Utrecht Work Engagement scale. BioPsychoSocial Medicine, 4, 1-6.

日本人のスコアの低さは圧倒的

まず、ユトレヒト・ワーク・エンゲージメント尺度(UWESを用いた16カ国のワーク・エンゲージメントのスコアの比較をお見せします。

p.4

なかなか衝撃的な比較なスコアなので、これだけでもインパクトあります。とにかく低い。。。最も高いフランスとは倍の差があるのは壮観ですら、あります。

この手のサーベイでは、強いて言えば韓国が日本と近いスコアになる傾向があるのですが、本論文では韓国が調査対象になっていないので、日本の低さがより顕著に見える印象です。ちなみにですが、東アジア諸国として括られる中国は、日本と韓国とは違って北米やヨーロッパと同じように高いスコアが出る傾向がありますが、この調査でも同様のようです。

文化差の内実

というわけで、文化差があることがよくお分かりいただけると思います。本論文では、日本の文化圏ではポジティブな感情の表現を抑制する傾向があることに理由を求めています。

そのため、ワーク・エンゲージメントの活力、献身、没頭という三つの下位因子のうち、特に仕事に没頭しているかどうかを尋ねる項目について否定的に回答しやすいとしています。

3因子構造が検証されないことにもつながる!?

この文化差により仕事に対するポジティヴな感情を表出しづらいという回答傾向が、ワーク・エンゲージメント尺度の3因子構造が出づらくなることにもつながっていると著者たちは指摘しています。

実際、日本においては、確認的因子分析を行った結果、3因子構造が維持できず、1因子構造が妥当であるという結論が島津先生たちの尺度開発論文でも述べられています。文化差ってなかなか奥が深いものなのですね。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!

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