【論文レビュー】似て非なる二つの構成主義ーー心理的構成主義と社会構成主義:深尾(2005)
構成主義と呼ばれる概念には、ざっくりいうと心理的構成主義と社会構成主義とがあります。本論文では両者の共通点と相違点を端的にまとめてくれています。
共通点
まず、心理的構成主義と社会構成主義の共通点から見ていきます。
外界を認識する際に、内界と外界とを峻別し、個人は外界をそのまま内界に映して認識するという捉え方をするアプローチがあります。そうした認識論とは異なり、個人の経験世界は構成されるものであるという認識をとるという点では両者は共通しています。
相違点
では両者の間で何が異なるのでしょうか。著者は端的に以下のように比較しながら述べておられます。
心理的構成主義は自身の内的世界(心)を自明視しているのに対して、社会構成主義はそうではありません。社会構成主義は、内的世界も外的世界も自明視せず、言語を通じた相互作用によって構築され常に更新されるものと捉えています。
長い補足
私自身が心理的構成主義と社会構成主義の相違に意識が向いたのは、高尾先生の2020年の論文を読んだときです。高尾(2020)は、ジョブ・クラフティングという概念の思想的な系譜について解説されたものとして有名です。
その論文内で、ジョブ・クラフティングを提唱した論文であるWrzesniewski & Dutton(2001)が心理的構成主義と社会構成主義とを混同して取り上げてしまっている可能性を高尾先生は【注】で解説されています。
いまだかつて、ここまで学びにつながる【注】を読んだことはありませんでした。この高尾先生の【注】で、心理的構成主義と社会構成主義との相違について私自身も理解することができたことを申し述べておきます。論文全体を読みたい方は以下を熟読なさってみてください。
こういう骨太な思想系にどっぷりと浸れる論考を読むのもいいですねー。尚、本論文では、社会・心理的構成主義についても触れられているので詳しく知りたい方は論文を当たってみてください。