【読書メモ】企業は新卒社員をどのように受け入れるべきなのか?:『これからのキャリア開発と組織社会化』(E. H. シャイン・尾川丈一 ・パーソル総合研究所著)
本書の第1章は、1964年にHBRに掲載されたシャインの論考の邦訳です。今から半世紀以上も前の論考のため、書かれているコンテントはやや現代に合わないものの、新入社員の適応に関する観点は今でも示唆的なものが多く、さすがはシャイン!と思うと共に、いま翻訳して出版したパーソル総研の目の付け所がすごい!と思うものでした。
アメリカでも大学を卒業した後の初職というものは存在しますので、新入社員という存在はいます(当たり前です)。1960年代当時では4-5年以内に約50%が自発的離職しているという解説もあるので、2020年代の日本企業とすごく離れているわけではありません。そのため、この論考の新入社員の適応に関する問題とアプローチの観点が多くの示唆を含むことになっているのでしょう。
課題の一つに、ストレッチ感のある職務アサインメントができない(が故に自発歴離職が生じる)というものが挙げられています。リクルートワークスさんが半年ほど前に出されて人事界隈では少しバズった以下の記事にもあるように、現代の日本企業の課題とも付合するものと言えます。
シャインは、このイシューに関して、課題とそれに対応するアプローチを提示しています。以下で現場で活かせそうな二点に絞ってまとめてみます。
①固定観念を捨てる
第一の課題は、企業が「大学生が未熟で、あたまでっかちで、無能であるという固定概念を信じこんでいること」(21頁)です。20XX年の新入社員は〇〇型です、というような紋切り型の誤った類型論がはやるような社会では、なおさら新入社員を十把一絡げにした固定観念が蔓延っていると言えるでしょう。
経営の観点から全体最適が求められることは理解しつつも、シャインは個別アプローチの必要性を説いています。全員が同じであるという固定観念を捨てて、新入社員の各人の多様なありようを理解して対応するということが求められます。一方でDE&Iを称揚しながら、他方で新入社員を画一的なアプローチで縛るという笑えない事態は是が非でも避けたいものですね。
②アサインする上司を選ぶ
学校を卒業したばかりの存在である新入社員は、独立したおとなでありながらも支援を受けたいという葛藤を持った存在であるとシャインはしています。尊重しすぎると放置として受け取られ、支援しすぎると過保護になるという、いずれも早期離職に繋がりかねない難しい状態です。
この課題には、こうした葛藤を理解しながら育てられる上司をアサインするというアプローチが挙げられています。そのためには、新入社員と、部門のマネジャーの双方を理解しているHRBPの果たす役割が大きいと言えるでしょう。外資のHRBPの場合には、9BOXや評価調整会議をファシるため全マネジャーの評価を把握し、新卒面接にも部門長クラスと同席して目線合わせできているので普通の仕事としてできるのですが、そうではない企業も日本には多いようなので、この点はギャップが大きいのかもしれません。
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