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【超訳】サビカスのキャリア理論(8/14)

前々回から続き、自己制御期(self-regulating)における前提となる考え方に基づいた仮説がいくつか提示されています。自己制御期に関するものは、今回で最後です。とにかく長かった。。最後のパートでは仕事の役割(work roles)に焦点が当たっていて、なかなか興味深いものがあります。

前提となる考え方(再掲)

(原文)
Late in childhood, individuals begin to function more often as motivated agents who direct their own lives toward congruent positions in society through self-regulation, that is, the processes by which individuals adapt their perceptions, feelings, and actions in the pursuit of a goal.
Savickas(2019)、22頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
幼少期の後半になると、個人は自己制御、つまり目標達成のために自分の知覚、感情、行動を適応させるプロセスを通じて、社会の中で一致した位置に自分の人生を導く、動機づけられた主体としてより頻繁に機能するようになる。

仕事の役割選択に現れる自己概念

(原文)
(19) As agents directing their own lives through motivational schemas and adaptation strategies, individuals implement their self-concepts by constructing activity preferences or selecting work roles in which to pursue their career goals.
Savickas(2019)、29頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(19) 個人は、動機づけスキーマと適応戦略による自らの人生を方向づける主体として、活動の好みを構築したり、キャリア目標を追求するための仕事の役割を選択することによって、自己概念を実行する。

変化に対してどのように適応し続けてきたかによって、自身のキャリア開発の一環としての仕事の役割の選択がなされ、そうしたプロセスを通じて自分とはどうあるものなのかという自己概念を職務や日常の活動に反映されるとサビカス先生は考えているようです。

仕事の役割の選好に影響するもの

(原文)
(20) Work-role preferences develop through the interaction of inherited aptitudes, physical make-up, opportunities to observe and play various roles, and evaluations of the extent to which the results of role playing meet with the approval of peers and supervisors.
Savickas(2019)、29頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(20) 仕事の役割に関する選好は、先天的な適性、体格、さまざまな役割を観察し演じる機会、役割遂行の結果が同僚や上司の承認にどの程度合致するかの評価などの相互作用によって発達する。

私たちがどのような仕事を好ましく感じるかに影響を与えるものについて述べられています。いわゆる特性では、性格だけではなく体格まで挙げられていることが意外ではありますが、身体特性に大きく依拠する職務もあるので影響はあるのでしょうね。

職業も一つの仕事の役割に過ぎない

(原文)
(21) Occupations provide a core role, although for some individuals this focus is peripheral, incidental, or even nonexistent. Then other life roles such as student, parent, homemaker, leisurite, and citizen may be at the core. (Super, 1990)
Savickas(2019)、29頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(21) 職業は中核的な役割を果たすが、個人によっては、この焦点は周辺的か付随的であり、あるいは存在しないこともある。その場合、学生、親、主婦、余暇人、市民など、他の人生の役割が中核となることがある。(Super, 1990)

仕事の役割という言葉に焦点を当ててサビカス先生は論じてきたのですが、ここでいう「仕事の役割」はいわゆる職業だけには留まらないとしています。つまり、私たちが社会生活を営む上で多様な役割期待があるものであり、職業以外の役割が中核的な役割を担うこともあるというわけです。

Hollandの六角形モデルの登場

(原文)
(22) Because social actors differ in vocational characteristics and social opportunities, they enter different occupational environments, which Holland (1997) described as RIASEC environments.
Savickas(2019)、29頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(22) 社会的行為者は職業特性や社会的機会が異なるため、異なる職業環境に入ることになり、Holland (1997) はこれをRIASEC環境と表現している。

Hollandの六角形モデルとして有名な職業興味診断が登場します。以下のような六つの職業興味の類型を想定して、自身の特徴を把握するというものです。先天的なものというよりも、社会との相互作用によって、職業興味が形成され、それを可視化するものとしてHollandを用いているということなのでしょう。

能力と興味関心と職業

(原文)
(23) People are qualified for a variety of occupations based on the match of their vocational abilities and interests to occupational requirements and rewards.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(23) 人は、自分の職業能力や興味と、職業上の要件や報酬との適合度合いに基づいて、さまざまな職業に就くことができる。

この辺はそりゃそうだよね、としか言いようがないですね。笑
Propositionは全て訳しているのでとりあえず訳してみました。

個人と社会との相互作用

(原文)
(24) Role selection and entry involves a synthesis and compromise between individual and social factors.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(24) 役割の選択と参入には、個人的要因と社会的要因の間における統合と妥協が伴う。

サビカス先生は適応という言葉を盛んに用いられるのですが、社会に対して個人が受身的に対応するという意味合いでは用いていません。ここにあるように、個人と社会とは相互作用する関係性であるということを強調されています。

外形的な職業上の成功

(原文)
(25) Typically, occupational success depends on the extent to which an individual's abilities and actions meet the requirements of work roles.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(25) 一般的に、職業上の成功は、個人の能力と行動が仕事の役割の要件をどの程度満たしているかによって決まる。

再び、そりゃそうだよねで済ますこともできますが、わざわざ「一般的に(typically)」としているところに着目するべきなのでしょう。この後に述べる主観的側面により着目した職務満足やキャリア・パターンにより重きを置いていると考えられるからです。

職務満足度への影響

(原文)
(26) Job satisfaction depends on establishment in an occupation, a work situation, and a way of life in which one can play the type of roles that growth and exploratory experiences have led one to consider suitable for meeting needs, fulfilling values, and expressing interests.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(26) 職務満足度は、成長や探索的な経験によって、ニーズを満たし、価値を満たし、興味を表現するのに適した役割を果たすことができる職業、仕事の状況、生き方が確立されているかに依存する。

サビカス先生のキャリア構築理論で重視されているのはキャリアの主観的側面です。主観的側面を示す変数の一つである職務満足度は、仕事の役割の影響を受けることが想定されています。

キャリア・パターンへの影響

(原文)
(27) An individual's career pattern -- that is, the occupational level attained and the sequence, frequency, and duration of jobs -- is usually determined by the parents' socioeconomic level and the person's education, abilities, personality, self-concepts, and career adaptability in transaction with the opportunities presented by society.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(27) 個人のキャリア・パターン、すなわち到達した職業レベル、仕事の順序、頻度、期間は、通常、親の社会的経済レベル、本人の教育、能力、性格、自己概念、社会が提供する機会との取引におけるキャリア・アダプタビリティによって決定される。

個人が描くキャリア・パターンもまた多くの先行要因の影響を受け、キャリア・アダプタビリティもその一部であることが言及されています。


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