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【読書メモ】信じる意志と科学:『ウィリアム・ジェイムズのことば』(岸本智典編著)

『ウィリアム・ジェイムズのことば』(岸本智典編著)を少しずつ読み直しています。今回は、信じる意志科学について考えさせられたことを書いてみます。

自分で考え、行動する

ジェイムズの言葉の背景には、人々を十把一絡げにして普遍的な「正解」を伝えることに対する強い違和感が垣間見えるものが多くあります。一人ひとりの多様なあり方を重んじていたようです。

私たちは一人ひとり育ってきた環境や時代が異なるのだから、自分が成功した方法をそのまま別の人に教えてもそれが必ずしも成功につながるわけではないことに注意が必要です。ジェイムズの言うように、最終的には「各々が自分独自の角度から事実と問題を見つめ、自分独自の仕方でそれらを処理しなければならない」のです。

p.175-176

一部の自己啓発書やビジネス書は「これさえすれば〇〇」というような紋切り型の言葉を並べますが、個別具体的な言説を適用できる状況は限られます。組織も同様で、他社の事例をそのまま展開しようとしてもワークしないことは明らかでしょう。私たちは、個人であれ組織であれ、多様な存在なのだから「自分独自の角度から事実と問題を見つめ、自分独自の仕方でそれらを処理しなければならない」というジェイムズの至言をじっくりと味わいたいものです。

信じる意志

では、自分自身で考え、検討し、現実に対応するためには何を拠り所にすれば良いのでしょうか。もちろん、経験則や科学的アプローチに基づくことも重要ですが、そうしたものが適用できない新規で可及的な状況に直面することもままあります。そうした際には、ジェイムズの著名な書名にもなっている信じる意志が大事だとしています。

十分な知的根拠がどうしても得られないのに、重大な生きた選択肢のあいだで否応なしの決断を迫られるような場合、私たちが好みや感情に基づいて一方を選ぶことは、正当なことであり、また必要なことでもあるとジェイムズは言います。これが「信じる意志」、「信じる権利」の擁護として知られる議論です。(中略)私たちが日々直面する状況は、完全な証拠が出揃うまで待っていてくれるようなものではありませんし、私たちの決断や行動にはいつも何ほどかの危険が伴います。

p.179

意志と科学

ここまで意志を重んじた箇所を引用すると科学的アプローチを批判的に捉えているとの誤解を招くかもしれません。以前の本書を基にしたnoteでも書いた通り、ジェイムズはアメリカ心理学の生みの親とも言われる存在ですので科学を批判しているわけではありません。

そのつどの信念・考えという作業仮説を携えて行為をし、仮に失敗しても次の仮説を作ってまたやる。このような仮説とテストの繰り返しが私たちの探究なのです。

p.180-181

このように、科学的アプローチとの共存をジェイムズは述べていると考えるべきでしょう。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!


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