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【読書メモ】聴き取りの解釈。(5/9):M・サビカス著『サビカス キャリア・カウンセリング理論』(第5章)

第4章で扱った聴き取りの後の段階では、その内容の解釈がカウンセラーには求められます。サビカス先生はこの聴き取りの解釈をアセスメントと呼び、アセスメントの目標は、クライエントが語った小さなストーリーを大きなストーリーであるライフ・ポートレート(life portrait)へと組み立てることであるとしています。

ライフ・ポートレートは、クライエントが自分自身の来し方・行く末を失わないようにしながら、編成的な学習のプロセスを促すためのものです。いわば、拠り所のような存在となるため、カウンセラーはライフ・ポートレートを描き出すことをアセスメントの目標にしています。

では、ライフ・ポートレートはどのように導き出されるのでしょうか。サビカス先生は、「カウンセリングは、そこにあるものを照らし出す」(101頁)ものであるとし、いかにクライエントの語る小さなストーリーから、クライエント自身が気付いていなかった全体像としてのパターンを提示するかが大事であるとしています。

こうしたパターンを協働的に創り出すためにカウンセラーに求められる能力は三つあるそうです。

①ストーリーに入っていく能力

クライエントの語るストーリーを受け容れ、ポジティヴなものばかりでなくネガティヴな状況や感覚にも注意を向けられる直感的で共感的な能力です。ストーリーの内容と共にそれを語るクライエントの雰囲気を感じ取り、痛みを含めた感情を受け留め、その語りの曖昧さにも寛容になる必要があるとサビカス先生は述べています。

②ストーリーを理解する能力

ストーリーごとの底流にあるキャリア・テーマを認識して、クライエントが用いるメタファーを用いてそれを表現する能力です。クライエントが使うメタファーには、クライエント自身が無自覚な意味合いや内容が含まれるため、それをカウンセラーが用いることで可視化することでクライエントのストーリーをお互いに理解することができると言えます。

③意味を精緻化する能力

クライエントの語るストーリーは多義的なものであり、曖昧なものであることがほとんどでしょう。こうしたストーリーに対して、カウンセラーは多角的な視点から解釈し、クライエントにとってしっくりくる新たな意味と可能性が付与されたライフ・ポートレートを創造する能力です。

アセスメントの目標を達成した後は、クライエントにとっての問題をいかに解決するかについての検討となります。第6章で扱われているので、後日まとめてみます。


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