【読書メモ】欠損値の対処法:『共分散構造分析[Amos編]』(豊田秀樹編著)
量的調査を行っていると欠損値(missing value)の対処が求められることがままあります。今回は、豊田先生の『共分散構造分析[Amos編]』の第7章を基にして、欠損値の対処法についてまとめます。なお、論文や書籍によって欠損と欠測が混在しており、私の複数のnoteでも表記が混ざっていますが、どちらも同様にmissingという単語を和訳したものなので同じ意味合いと捉えてください。
欠損値の生じ方
調査をする際に欠損値が生じるのはごくごく自然なことです。ただ、その生じ方に応じて留意が必要です。
欠損が生じるタイプには、①MCAR(Missing Completely At Random:完全ランダム欠損)、②MAR(Missing At Random:ランダム欠損)、③MNAR(Missing Not At Random:非ランダム欠損)の三つがあります。このことは以前ほかの書籍を扱った際にまとめたので、ご関心のある方は以下をご笑覧ください。
リストワイズ削除
欠損値への対処法にはいくつかあり、上のnoteでは多重代入について触れましたので割愛し、ここではリストワイズ削除(Listwise Deletion)についてまとめます。
リストワイズ削除は「1つでも欠損のあったオブザベーションに関しては、そのオブザベーション全体を削除する方法」(p.111)のことを指します。直近の日本の経営学領域の論文でもよく使われる方法です。
完全情報最尤推定法
他方で、SPSS Amosではデフォルトで完全情報最尤推定法(Full Information Maximum Likelihood Estimation:FIML)が設定されています。Amos以外の統計ソフトでも、たとえばMplusにおいてmissing is ***とシンタックスを書いて分析を回すとFIMLで欠損値処理をしてくれます。
この方法は、前提として欠損値がランダムに発生していると仮定しています。そのため、ランダムに生じていない場合には結果にバイアスが生じるリスクがあるのでその点で要注意と言えます。
最後まで目を通していただき、どうもありがとうございました!