【読書メモ】「職場学習風土」と「個人の経験学習」の関係を探究する:『職場学習の探究 企業人の成長を考える実証研究』(2章)
立教LDCの頃からお世話になっている伊勢坊先生(中原研究室の大先輩でもあります)が『職場学習の探究―企業人の成長を考える実証研究』の2章として書かれている「「職場学習風土」と「個人の経験学習」の関係を探究する」を読みました。学習論は好きな一方でメインの研究領域とは少々外れるため詳しくないのですが、職場学習と個人の経験学習や業績との関連との関係が明らかになっていてとても学びになるとともに示唆深い内容でした。
組織学習から職場学習へ
職場学習の議論に入る前に組織学習から先行研究で整理されています。これが無茶苦茶わかりやすくてありがたいのです。ざっくりと書いてしまうと、組織学習という概念は主に三つの捉えられ方があり、①組織は学習せず個人の学習の集合体として組織学習がある、②組織内のルーティーンの蓄積が組織学習である、③個人の学習と組織の学習の両方があり統合されたものが組織学習である、ということのようです。
組織は複数の職場から構成されるものですが、私たちが日常的に働く職場という単位にまで落とし込んだ学習が職場学習です。中原先生の『職場学習論』をもとに以下のように伊勢坊先生は書かれています。
職場学習風土
職場における学習を組織風土の観点から捉えたものを、先行研究をもとに職場学習風土としています。松尾先生と中原先生とが出された論文から以下のように引用されています。
大元の引用文献情報は以下のとおりです。
職場学習風土がもたらすもの
本章で実証されたモデルは、職場学習風土→経験学習→能力向上→個人業績、という関係性です。職場学習風土の規定要因は先行研究で明らかになっていたのですが、本章では職場学習がもたらすものを実証したことが理論的な意義です。つまり、職場単位の学習が個人の学習・能力・業績に影響することが明らかになった、というわけです。
SEMの結果図を見ると、上記以外のポイントとしては、①職場学習風土が個人の業績に直接影響していること、②経験学習のうち具体的経験が個人の業績に直接影響していること、の二点も挙げられます。
実践的な意義としては、個人の学習に焦点を当てるだけではなく職場学習風土という面での学習にも焦点を当てることの重要性が言えます。また、②は職務アサインメントの重要性が改めて明らかになったと言えるのではないでしょうか。
最後まで目を通していただき、ありがとうございます!