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「なるほど、だから〇〇と□□の関係性を考察するには△△法なのか!」と腑に落ちる本:『マネジメント研究への招待』(須田敏子著)を読んで。

研究という同じ言葉で括れても、その目的や方法は多種多様です。「よく最近の論文で目にする方法だから」とか、「この方法だと身近な先輩が教えてくれそうだから」といった理由で手法を選ぼうとすると、魂胆を見破られてお叱りを受けることになります。(実体験より)

では、どのように研究方法を選択すれば良いのか。自身が探求したいテーマおよびその近辺の論文を地道に読み込んでアプローチのしかたを探るのが一番です。とはいえ、その道案内があれば研究が進みます。本書は、その道案内役の一つとなり得る、研究方法の教科書と呼べるものと言えそうです。

研究方法には、客観主義パラダイム主観主義パラダイムという研究軸で捉える必要があるとされています。それぞれ、存在論・認識論・研究アプローチの三つの観点から解説がなされているのが納得的です。

ここでも研究方法を取り巻く二つのパラダイムのうち、主観主義パラダイムの認識論として社会構成主義が出てきました。昨夏に、大学院の課題でAI(Appreciative Inquiry)に影響を与えている存在として社会構成主義を集中的にインプットしてまとめる機会があったのですが、それがここまで生きるとは。好きなテーマなので読み込んだだけなのですが、まだ時間がある時期に読んでおいて助かりました。

客観主義パラダイムか主観主義パラダイムかという軸と、対象が広いか狭い(集中的)かという対象範囲の軸とを掛け合わせることで、適した研究方法を検討することができます。

見たい現象、およびそれを見られるフィールドに基づいて研究方法は選択されるものです。研究方法の観点から言えば、想定している研究方法がこの四象限のどこにプロットされるかについて理解することなく選んでしまうと探求できなくなる、ということです。

研究するためには、事象をどのようにデータ化するかという対象にばかり意識が向きがちです。自分自身の興味に基づいて研究をしたいと思うわけですから当然と言えば当然でしょう。

しかし、対象とともに、その手法である研究方法についてその特徴を理解しておくこと。また幅広に選べるよう俯瞰的に研究方法を知っておくこと。逆説的ですが、研究方法を知っているからこそ対象に対してのアプローチが多様かつ柔軟になるという側面もあるのかもしれませんね。


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