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【読書メモ】『社会構成主義のプラグマティズム』(若島孔文編著)

本書はなかなかスラスラと読める内容ではありません。語り口は口語でわかりやすいものの、社会構成主義プラグマティズムの関係性をアクロバティックに論じているため、少し立ち止まって前の部分を読み返さないとなかなか理解が難しい感じでした。言い方を換えれば読み応えのある良書といえます。

社会構成主義とプラグマティズム

本書のタイトルでは社会構成主義とプラグマティズムの二つの言葉が並んでいますが、両者はなかなか並び立つことはありません。それはなぜなのかという点から説明をしています。

プラグマティズムという視点がモダン思想を背景としていることに対し、社会構成主義はポストモダン思想とあい通じる点が強いからでしょう。

p.1

現実とゲンジツ

著者の言葉遣いがとても興味深いのは、現実とゲンジツとを使い分けている点です。

語用論的構成で作り上げられている現実、いわゆるナイーブな意味での現実と、その社会構成主義的、その物語論的な立場で言うときのカタカナのゲンジツというのは、お互いに影響しあっているということです。現実とゲンジツは相互作用しているという点です。

p.28

誤解を恐れずに言えば、多くの人の共通理解を得ているいわば客観的と形容されるような現実と、個人が環境と相互作用しながら物語的に構築するゲンジツとは異なるよね、でも両者は影響し合っているんだよね、ということがここでは語られています。社会構成主義の認識論に対する誤解の一つとして、現実を無視してゲンジツばかりを重視しているというものがありますが、そうではないことがこの部分を読むとよくわかります。

心理的構成主義

社会構成主義のナラティヴ・アプローチに至る前に、心理的構成主義による家族療法がカウンセリングにおける主流であった時期があると著者はしています。

コミュニケーションによって相手とやりとりをすること、彼らのコミュニケーション論で言えば相互拘束という形になりますが、相互に相手とやり取りをし合いながら、現実の意味が構成されていくと、こういう視点を持っていたわけです。

p.58

こうして心理的構成主義においては、個々人が他者とコミュニケーションをとって影響を与え合いながら、個々人が自身のゲンジツを内的に構成する、という捉え方がなされると考えられます。


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