【論文レビュー】職種や性別によって労働者のワーク・エンゲージメントに影響するソーシャル・サポートは異なる!:中村・橋本(2021)
本論文では、企業で正社員として働く労働者を対象として、ワーク・エンゲージメントおよび抑うつ感とソーシャル・サポートとの関係性を明らかにしています。以下では、ワーク・エンゲージメントとソーシャル・サポートとの関係性に焦点を絞ってまとめます。そのため、抑うつ感との関連について詳しく知りたい方はぜひ論文そのものに当たってみてください。
先行研究の中での位置付け
ソーシャル・サポートとワーク・エンゲージメントの関係は、JD-Rモデルの中で位置付けられていて、メタ分析でもその関係性が明らかになっています。JD-Rモデルでは、ソーシャル・サポートが仕事の資源(下図「Job resources」)、ワーク・エンゲージメント(下図「Motivation」)がポジティヴな心理的要因に該当しています。
英語文献での先行研究では両者の関係は明らかになっていて、また国内の実証研究でも対人援助職ではワーク・エンゲージメントとソーシャル・サポートのうち上司および同僚のサポートとの正の関係が明らかになっていると著者たちはしています。その上で、本研究では企業労働者において両者の関係性を明らかにしている点が理論的貢献であり、サポートの主体の相違を明らかにしている点も貢献できている点であるとしています。
性別による違い
ワーク・エンゲージメントおよび抑うつ感とソーシャル・サポートとは関係があるというのが本論文の結論です。その上で、まず性差の有無、およびその内容の相違について明らかにしているのが興味深い点です。
上の表を見ていただくと、男女のそれぞれに効くソーシャル・サポートの種類が異なることがよくわかります。同僚や上司の情緒的サポートが男性のワーク・エンゲージメントに効くのに対して、女性の場合には上司の道具的サポートが影響を与えるとしています。他方で、男性の抑うつ感にはソーシャル・サポートは影響がないのに対して、女性には職場外の大切な人のサポートがそれなりに強く影響しているということが明らかになっています。
職種による違い
次に、事務職、営業職、製造職、研究職、その他という5つの職種群と性別を掛け合わせた関係性が以下の二つの表に表れています。
職種ごとに影響を与えるソーシャル・サポートの違いがあるという点も重要ですが、同じ職種でも男女で異なるので性差がいかに大きいかということも伝わるのではないでしょうか。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!