【論文レビュー】サーバント・リーダーシップとジョブ・エンベデッドネスもキャリア・アダプタビリティと影響します:Elsayed & Abdel-Ghani(2022)
サーバント・リーダーシップとはざっくりとしたイメージで言えば縁の下の力持ち的なリーダーシップのことです。ジョブ・エンベデッドネスとは仕事に対して自身が埋め込まれている度合いのことを示す概念で、離職やリテンションと関連する概念です。本論文の結論は、この二つにキャリア・アダプタビリティを加えて、三者間で正の相関関係があることを実証しています。
サーバント・リーダーシップ
石川淳先生の『リーダーシップの理論』によればサーバント・リーダーシップは「フォロワー中心、利他主義、道徳的・倫理的価値」(161頁)などによって特徴づけられるとされています。
このサーバント・リーダーシップがジョブ・エンベデッドネスとキャリア・アダプタビリティに影響していることを本論文は明らかにしています。
考察がもったいない!?
本論文の結論は、サーバント・リーダーシップとジョブ・エンベデッドネスとキャリア・アダプタビリティの三つの概念がお互いに正の相関関係を持ちますよ、という点を述べています。言い方を変えれば、それ以上でもそれ以下でもありません。媒介効果を見るでもなく、調整効果を見ることもありません。
仮説として設定している三つも、三者間の相関関係があることについて触れているだけです。ちょっともったいない感じの考察に思えます。
本来の仮説は複雑だったのかも?
裏を返せば、もう少し複雑なモデルを想定していたにもかかわらずその関係性が見出せなかったので、このような単純な(失礼!)仮説を設定して実証できました、という結論に持っていったようにも見受けられます。実証研究って難しいですね。明日は我が身だと思って自戒を込めて。