【読書メモ】否定から入る新入社員研修・職場フォローにはリスクしかない!?:『人と組織の行動科学』(伊達洋駆著)
新卒入社1〜2年目の頃、新入社員研修を売る目的で企業の人材開発担当に対するワークショップをよく企画していました。その際に競合分析をするわけですが、他社のサイトを見てみると、「学校で学んだことは全て無意味!」とか「〇〇に体験入隊して社会人の根性を叩き込む!」などといったメッセージを発する研修がけっこうあり、辟易とすることがしばしばありました。
ベンダーがその手の研修を提供するということは、企業側にもニーズがあるということです。ベンダー側から事業会社の人事・人材開発にキャリアを変えてからも、新入社員をタブラ・ラーサ(tabula rasa:真っ白な白板)として捉えてゼロから教え込むという主義・主張を唱える方々がそれなりにおられることをよく理解しました。本書では新入社員の組織社会化も扱っていて、私がこれまで感じてきた違和感を、行動科学の知見で裏打ちしてくれていて、読んでいて清々しいものでした。
剥奪的社会化の危険性
ざっくり言いますと、企業をはじめとした組織に馴染んでいくプロセスを組織社会化と呼びます。「馴染む」というとポジティヴですが、副作用も生じます。その一つが剥奪的社会化で、入ってくる社員の価値観を完全否定して組織の価値観を刷り込むものと言えます。
新人研修を通じて、学生時代に得られた知識・経験を全否定し、その企業の社会人としての基礎をゼロから教え込むというスタイルの研修は剥奪的社会化を促してしまいかねません。また、職場でも新入社員の言動の背景にある価値観を否定するかのような指導・教育も極めて危険と言えるでしょう。
剥奪的社会化を緩和するフォロー
では、剥奪的社会化にならないようにどのように現場でフォローできるのでしょうか。
ビジネスの現場では、「自分で考える」「自律的に行動する」といった個人の主体性に焦点があたりがちです。剥奪的社会化の危険性を意識しながら、職場での新入社員のフォローアップに留意したいものです。