【先行研究】キャリア・アダプタビリティの先行要因(6)バウンダリーレス・キャリア志向
ニューキャリア論と呼ばれる潮流には主に二つのキャリア理論が含まれています。一つは先日取り上げたプロティアン・キャリアで、もう一つが本日取り上げるバウンダリーレス・キャリアです。雇用の流動化に伴って生じたキャリア理論で、ざっくり言えば、組織にとらわれないキャリアのあり方を標榜するものと言えます。
バウンダリーレス・キャリアへの志向性もまた尺度としてありまして、結論を先取りして言えば、バウンダリーレス・キャリア志向もキャリア・アダプタビリティに影響を与えています。影響のあり方について先行研究を基に見ていきます。
ニューキャリア論とキャリア・アダプタビリティ
Stauffer et al.(2019)は、バウンダリーレス・キャリア志向だけではなくプロティアン・キャリア志向も説明変数とした研究デザインをとっています。その上で、キャリア・アダプタビリティを媒介してキャリア満足(career satisfaction)に影響すると結論づけています。
後で扱うことになると思いますが、キャリア・アダプタビリィの帰結要因としてキャリア満足はよく出てくる概念なのです。結果図を以下に引用しておきます。
ニューキャリア論では、組織に依存しない個人の主体性が前提とされています。プロティアンやバウンダリーレスの志向性がキャリアの満足に繋がるためには、組織を含めた他者や環境と個人との相互作用による適応能力であるキャリア・アダプタビリティを持っていることが重要である、というこの図の含意は個人にとっても組織にとっても重要なメッセージを有しているのではないでしょうか。
バウンダリーレス・キャリアをもっと知りたい方へ
以前にバウンダリーレス・キャリアの主要な論文について書いたことがあるので、詳しく理解したい方は以下をご笑覧くださいませ。