【論文レビュー】リアリティ・ショックはどのように生じてどのような影響を及ぼすのか?:尾形(2012)
新しく組織に参入するとき、私たちは何らかの認識にギャップやズレを感じます。こうしたものを組織行動論ではリアリティ・ショックと呼びます。本論文ではその発生のメカニズムや影響について丹念に説明をしてくれています。
発生のメカニズム
リアリティ・ショックはどのように発生するのでしょうか?さまざまな文献で描かれている内容と基本的には近いものですが、著者はご自身の文献を基に以下のように引用しています。
現実と期待の組み合わせ
私たちが組織に新しく参入したときに感じるギャップには大小があり、またそこにはネガティヴな感情だけではなくポジティヴな感情もあります。それらを組み合わせると以下のように分類が可能であると著者はしています。
ギャップを感じる、という言葉だけでは価値中立的ですので、それがどのような大小の差があり、ポジ・ネガの意味的な差異があるのかを峻別する上で大事にしたい分類軸と言えるでしょう。
リアリティ・ショックの多様性
ここまでリアリティ・ショックが生じるメカニズムを見てきましたが、前提要因や組織参入者が遭遇する現実などによってさまざまなリアリティ・ショックを組織参入者は感じることになります。著者がまとめてくれている以下の表はなかなか読み応えがあります。
概念的に理解するというよりも、実際の新卒で入った企業での経験や、転職した後の経験を想起するとあるあると感じられるものではないでしょうか。
ネガティヴな影響
リアリティ・ショックは、それが長く続くことによって組織参入者にネガティヴな影響をもたらします。先行研究で言われていることは、組織コミットメント、上司の信頼感、組織社会化、離職意思といった者へのネガティヴな影響が言われてきたと著者はしています。
さらには、組織参入者の自己無力感をもたらしたらい他者不信感を醸成してしまうことも付記されている点に着目するべきでしょう。
ポジティヴな影響
リアリティ・ショックが組織参入者にとってネガティヴな影響を与えることはよくわかると思います。4つのポジティヴな影響を指摘しています。
①覚醒効果
それまでのやり方や常識が通用しなくなったり、自身の現状に気づかせてくれる効果です。新しい組織に入ることで感じるギャップからこうした効果が得られるわけです。
②動機づけ効果
ギャップやズレといった認知的不協和に遭遇したことによって、対応しようとする前向きな意欲が高まるという効果です。
③学習促進効果
①や②と関連するものとして挙げられています。つまり、ギャップを埋めていくために自分自身の不足しているものを学習して対応しようと促進されるという効果です。
④ネットワーク広範化促進効果
新しい組織に参入することは、これまでの組織や働き方で協働してきた人々と異なる人々との連携が求められます。そのため、自身のネットワークが拡大する効果もあるわけです。
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