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【読書メモ】キャリアストーリー・インタビューとは!?(4/9):M・サビカス著『サビカス キャリア・カウンセリング理論』(第4章)

本章では、サビカス先生が約30年にわたるカウンセリングの実践経験を踏まえて体系化されたキャリアストーリー・インタビューのプロセスが丁寧に語られています。価値観診断と分析による職業ガイダンスと対比して、直感的思考と帰納法に依るキャリア構成理論に基づくカウンセリングのベースには、キャリアをストーリーとして聴き取って意味づけを行うことが肝要なようです。

キャリアストーリー・インタビューは五つの主要な質問から成り立つとして、サビカス先生は、①ロールモデル、②雑誌・テレビ番組・ウェブ記事、③好きなストーリー、④モットー、⑤幼少期の思い出、を解説しています。

①ロールモデル

まず、子供の頃に憧れていたロールモデル三名について尋ねることが提唱されます。ここで重要なのは、誰に憧れているかではなくどのようなところに憧れているか、です。カウンセラー側は、クライエントが答えた人物に対して予見を持つ可能性がありますが、あくまでクライエントがその人物の何に対して憧れているかを聴き取ることが重要です。

こうしてロールモデルの特徴についてクライエントが語ることは、無意識のうちにクライエント自身の自己概念を説明していることを意味するそうです。そのために、冒頭でロールモデルの特徴を話してもらうことが重要だと言えます。

②雑誌・テレビ番組・ウェブ記事

二番目の質問は、クライエントが何に興味を持っているかを顕在化するためのものです。興味(interest)とは、ラテン語の原義を辿ると、「間(inter)に存在する(est)」となるそうで、ある人が社会の中(間)においてどこに関心があるかを示すため、サビカス先生は興味を重視しています。

キャリア構成理論(Savickas, 2013)では、興味とは、個人の欲求と、それらの欲求を満たす目標に到達するための社会的機会との間の心理社会的に緊張した状態を意味する。(85頁)

こうした興味が意識的な行動として顕在化したものが、本人が着目するメディアの内容に対象として現れるとして、雑誌・テレビ番組・ウェブ記事を質問することが有効としています。

③好きなストーリー

①②でクライエントが持つ自己概念や望ましい職場環境が明らかになった後で、クライエントが、ありたい姿や望ましい環境の中に自分自身をどのように位置付けて語るのかにカウンセラーは着目します。注意深くクライエントの語りに耳を傾けることで、クライエントのいわば台本を理解するのです。

④モットー

また、クライエントが自分自身に対して行う助言を聴き取ることも重要だそうです。それは③の好きなストーリーの中で出てくることもあるでしょうし、自己概念や環境をもとにクライエントがクライエントに対して何を言うかという質問を挟むことでモットーが出てくることもあると考えられます。

⑤幼少期の思い出

①から④まで聴き取った後で、クライエントの個人的な話として幼少期の思い出を語ってもらうことが重要だとサビカス先生は述べます。というのも、幼少期の思い出として出てくる物語は、現在のクライエントの持つ価値観を内包するメタファーとして見なすことができるからです。

聴き取る際には、状況・言動・結果という「三点セット」ともSBIとも言われる内容で具体的に語ってもらうことが重要であるとサビカス先生は語っています。その上で思い出に見出しをつけてもらうことを行ったら、キャリアストーリー・インタビューは終了です。これ以降は、第5章でのアセスメントの内容になるので、また後日。


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