【読書メモ】今後の組織コミットメント研究の展望とは!?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(8/8)
最終章では、組織コミットメント研究の今後に向けた展望が語られます。2003年という本書の出版年を鑑みれば、その後の実務面での展開と符合する箇所もありなかなか興味深い内容です。
ここでは三つほど目に留まったものを取り上げてみます。
①規範的要素を深掘りせよ!?
Meyerらの一連の研究によって、組織コミットメントは三次元から構成されるという考え方が一般的になっています。そのうちの規範的コミットメントは組織に居続けなくてはならないという義務感からくるものですが、こうした義務感自体はどこから来るのでしょうか。
他の概念も同様ですが、組織コミットメントについても文化差が議論になります。組織社会化によって内的な規範が形成されるという大枠のメカニズムがありながらも、他の章で扱ったように勤続年数が関係しないという結果もあります。転職がいわば当たり前の出来事になっている現在において、規範的要素を深掘りする意義はあると言えそうで、ジョブ・エンベデッドネスはその流れにあると言えるのではないでしょうか。
②専門人材のコミットメントとは!?
特に日本企業においては学卒社員は一社でキャリアを積み上げてジェネラリストを目指すということが志向されてきました。私が知る方にもこのようなタイプで非常に優秀な方が多くおられます。
他方で、ジェネラリストを志向した(あるいは目指さざるを得なかった)社員が多く活躍できているかと言われるとそうではありません。知識やスキルの陳腐化のスピードが上がっている環境では、特定の職務の中で力を蓄え変化に対応できるように横に拡げていくというキャリアのすすめ方もあります。
こうした専門人材にとってコミットメントの対象は、組織よりも職業やキャリアに向かうことは必然とも言えます。職業コミットメント(occupational commitment)やキャリアコミットメントの必要性は、上述したメイヤーらの研究の時点から言われていましたが、日本企業でもようやくその重要性に直面しつつあると言えるのではないでしょうか。
③日本的帰属意識はあるのか!?
文化差に着目して日本的帰属意識なるものはあるのか、あるならばどのようなものなのかという研究も必要です。かつて、関本先生や花田先生が1980年代半ばから1990年前後まで取り組まれてこられましたが、その際には日本的帰属意識は明確にはないという結論でした。
しかし、将来に向けたさまざまな展望が提示されていたことも事実です。来週はそれらの論文をレビューしてみます。
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