【読書メモ】対話的自己論とは何か?:『自己形成の心理学』(溝上慎一著)
溝上慎一先生の『自己形成の心理学』、大変おもしろかったです!今回は名残惜しくも最終章を読んで興味深かった自己論についての溝上先生の考察についてまとめていきます。
対話的自己論以前
まず、溝上先生が依拠されている対話的自己論が登場する以前の自己論について以下のようにまとめておられます。「大胆に」まとめたという点が、後から学ぶ者としては大変ありがたいです。
自己論は要素還元主義に基づくものであった、というのが溝上先生がまとめてくださった要諦です。
対話的自己論の意義
要素還元主義的であった自己論に対する概念として生まれたのが対話的自己論です。
要素還元主義を否定し、他者や社会に対してオープンで多様な自己のあり方を提示するものであると言えます。
現代にいきる対話的自己論
ではなぜ今、対話的自己論が求められるのでしょうか。そこには社会の変化があると著者は述べておられます。
現代において、私たちが参画する社会は多岐にわたるようになっていますし、その社会も変化します。こうした多様でダイナミックな社会の中で形成する多様な自己を捉えるためには、要素還元主義的な自己論ではなく対話的自己論が求められる、というわけです。
McAdams登場!
ここまででまとめを終えても良いのですが、最後に胸熱だった点を余談的に。
研究の関係でサビカス先生の論文をよく読み直すのですが、よーく登場する研究者の一人にMcAdamsさんがいます。対話的自己論の流れで物語論によるアイデンティティ形成を述べた人物としてMcAdamsさんが述べられていることで、こういう系譜なのねということを学べました。ありがたや。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?