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【論文レビュー】キャリアという概念の源流を探る旅:Super (1954)
先日、ある先生が「〇〇という概念の起源はなんですか?教えてください。」と問われている場面をお見かけしました。私が尋ねられたわけではないのですが、そういえばキャリアという概念はどこまで遡ることができるのだろうと印象に残る質問でした(と同時にその質問をされたら困るなと冷や汗をかきました)。近い将来、博論を書くときに調べる必要があるのでこのあたりの探索をしばらくしてみようと思います。
Super, D. E. (1954). Career patterns as a basis for vocational counseling. Journal of Counseling Psychology, 1, 12-20.
スーパー登場!
キャリアという概念の起源を調べていると、ドナルド・スーパーさんが出てきます。私が研究しているのはキャリア・アダプタビリティなので、スーパーさんはサビカス先生の師匠の一人という位置付けなのでわりと馴染みのある方です。
本論文のタイトルは、vocationという「職業」(天職や適職というニュアンスが強いもの)に関するカウンセリングの土台に個人のキャリア・パターンがあるという意味合いです。つまり、職業カウンセリングが元々存在したものであるのに対して、そこにキャリアなる概念のパターンを基に対応してみましょうという提案をしていることがわかります。
キャリア=心理的要因+社会的要因
この論文タイトルの内容を踏まえて、以下の箇所をご覧ください。
Such career pattern studies should be genetic in design and should take into account the psychological and sociological factors which actuarial studies and the experience of competent observers and clinicians suggest may be significant. They would lead to the formulation of a theory of career patterns.
(GPT4先生訳を基に一部修正)
このようなキャリア・パターンの研究は、遺伝的な設計を取り入れるべきであり、統計的研究や熟練した観察者や臨床家の経験が重要であると示唆される心理的・社会的要因を考慮する必要がある。こうすることにより、キャリア・パターンに関する理論の構築につながるだろう。
スーパーさんに大変申し訳ないのですが、文章がなかなか読みづらいです、少なくとも非英語圏に住む私にとっては。思いっきり間を端折ってしまえば、「キャリアのパターンに関する研究は心理的・社会的要因を考慮する必要がありますよ」ということです。つまり、キャリアという概念は個人の心理的要因を表すものであるとともに、個人と環境との相互作用としての社会的な要因を表すものでもある、という感じでしょうか。
キャリア研究の発展の予言!?
本論文には最後にノース・ウェスタン大学のJrwin A. Bergがコメントを記しています。その内容は、キャリア研究の発展に関する予言めいたもので、実現したように思える内容です。
But as a venture in prophecy, I should say that in a decade or two we shall routinely be using the research results of career pattern theory with the same facility that we use the findings which stemmed from trait theory.
(GPT4先生訳を基に一部修正)
しかし予測として述べるならば、今後10年から20年のうちに、私たちはキャリア・パターン理論の研究成果を、特性理論から得られた知見と同じように、日常的に活用するようになるだろう。
実際にキャリアという概念はその後に研究蓄積が多くなされ、2020年代の現代においては日本の雇用社会でも当たり前に使われる概念となったので、予言が的中したということなのかもしれません。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました!