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【読書メモ】パラグラフの作り方:『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』(阿部幸大著)

阿部幸大さんの『まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書』の第3章から第5章ではパラグラフ(段落)に焦点が当たっています。論文の書き方とか、一文ごとの文章の書き方とかをテーマにした書籍はありますが、パラグラフに絞った書籍はお目にかかることはありませんでした。ただ、パラグラフという絶妙な単位は、アカデミック・ライティングにおける基礎的なポイントとして外せないということが本書を読むと伝わってきます。

「書けないやつは読めてもいない」

第4章ではじめて出てくる表現で、その後も多く著者が書いている言葉に「書けないやつは読めてもいない」(p.77)というものがあります。論文は読めるけど書くのは苦手なんですよね、ということをよく言ってしまう身としては、痛いところを突かれてぐうの音も出ません。

わたしたちは文章を、「よし、書けてるな」とか「どうもうまく書けていないぞ」などと自己批判しながら書いてゆく。つまり、わたしたちは書いたそばからそれを読者として読み、出来不出来をジャッジして、修正しながら書き進めてゆく。

p.77

書く=読むことであるため、うまく書けない=うまく読めないというロジックに反論することはなかなか難しいのではないでしょうか。

パラグラフに着目する理由

二万字の論文を書きあげるのは大変ですが、一文一文の内容を吟味しすぎるのも窮屈です。その点、パラグラフという単位に集中して論文を書くというのはなかなか小気味いいもののようです。

一段落くらいだったら書けるわい!という方は、ぜひ以下の引用箇所を読んでみて、自分自身の文章を省みてください。

パラグラフが短いということは、そのパラグラフで提示するパラグラフ・テーゼの論証が不十分であるということを示唆している。査読をクリアできる書き手は、一つのパラグラフ・テーゼを論証するためには、諸学者よりもかなり多くの字数を割いているのだ。パラグラフの短さは思考と議論の粗雑さの現われである。

p.82

私は、noteで書く文章の段落と、論文の段落とは分けて考えています。noteをはじめとしたブログ文化では、段落は短く、あるいは一つの文章ごとに切って書くことが分かりやすいとされている印象です。複数の文章を入れ込むとモッサリ感が出てしまうからでしょうか。

他方で、論文を書く際には意識的に一つの段落内の文章は多くなります。これは自分なりにも意識してきましたが、それでも共著者の先生方からの赤入れが入ることは多く、「あ、文章が少なすぎて飛躍があったのだな」ということに気付かされる日々です。

目安となる段落の字数

パラグラフ内における字数にもちろん正解はありません。また、書かれる領域によって異なるものでしょう。そのため著者は、自分自身の研究領域の先行研究から、特に参考となるモデル論文を読んでパラグラフ内の字数と論文におけるパラグラフの数をカウントすることを推奨しています。きわめて現実的で、興味深い先行研究の活用方法です。

こうした自分自身で行う先行研究での検証を最優先にしながらも、あくまで一つの参考として以下のように提示してくれるのもありがたいです。

モデル論文を見てもよくわからんのでズバリ何字か決めてくれというのであれば、1万字なら500字、2万字なら800から1000字という数字を挙げておく。

p.84

人によって印象は異なるかもしれません、個人的には思ったよりも長いなという感想を持ちました。おそらく、論文内の文章ごとの関係性に飛躍があるからだと思うので、見直そうと思います。

パラグラフ内の抽象度の推移はU字型に

パラグラフ内での論理展開は、抽象と具体とを行きつ戻りつすることになります。抽象とはたとえば・・・のことで、さらに行きつ戻りつとは具体的に・・・ということで、だからポイントは・・・です、というように、抽象から具体へと進み、具体から抽象へと戻るのが良いと著者はしています。

抽象度を縦軸にし、横軸に文章の順番を置くと、「パラグラフの抽象度の上下運動がなるべく滑らかなU字型に近づくのが理想」(p.92)であると著者はしています。これはぜひ参考にしたい内容で、このU字型がきれいになっていないので私のパラグラフ内の文章は短く飛躍があるのではないか、と反省しました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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