【読書メモ】適切な研究応用のためのチェックリスト:『心理学・社会科学研究のための構造方程式モデリング Mplusによる実践』(村上隆・行廣隆次監修、伊藤大幸編著、谷伊織・平島太郎著)第9章
第6章から第8章まではフルSEMやロジスティクス回帰分析について解説されています。一旦、直近で私が使う研究モデルではなさそうなので、ざっとだけ目を通してnoteには書きませんでした。使うときに改めてまとめるかもしれませんが、研究デザインのチェックリストとして活用できそうな第9章をまとめます。むちゃくちゃありがたい内容なので、この章も量的研究を行いたい大学院生必読かもしれません!
尺度開発でのモデル適合
本章では、章タイトルの通り、全面的に研究で応用する際のチェックリストが書かれています。個人的に切実な尺度開発での確認的因子分析のモデル適合について、ポイントを以下のように端的に述べていらっしゃいます
ここでは二つの起因が挙げられています。まず、因子構造に関する仮説の誤りが起因となる前者の場合には、探索的因子分析を行ってモデルの再構築を試みることが推奨されています。
次に、後者の場合には、交差負荷や誤差相関を示す項目を入れ替えるなどして測定精度の向上を図ることが推奨されています。両者の相違点を見極めながら、丁寧に対応するということが求められていると言えそうです。
モデル適合度としてみるべき指標
Amosで確認的因子分析を行うと、さまざまなモデル適合度の指標が出てきて、何をどのように使えば良いのか迷います。似たような目的で行われている先行研究での示し方から学んだり、先輩研究者からの口伝によってなんとか形にできるものの、なんらかの他のガイドラインもほしいなと思っていました。
本書は、このような新米研究者見習いに優しい内容で、以下のような踏み込んだ記述があります。
これはありがたいですね。統計分析手法は日進月歩の状況なので、適宜情報のアップデートは必要でしょうが、一旦はこちらに従って対応できるのではないでしょうか。
適合度の数値が良いという意味
研究する上でのマインドとして重要な記述も最終盤にはあります。
ひたすらソフトウェアを用いて分析して、数値ばかりを眺めていると、ついつい得られた数値がすべてだ、と思いがちになります。そうしたときに、あくまで「反証されなかった」という意識を持つことは大事です。上記の引用箇所は、折に触れて意識したい至言です。