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【読書メモ】条件付き潜在成長モデルとは何か?:『発達心理学のための統計学』(宇佐美慧・荘島宏二郎著)

ある変数が複数時点においてどのような変化を辿るのかについて、線形であることを前提してモデル化するものの一つとして潜在成長モデルを以前noteで取り上げました。今回は、その線形に変化する変数に対して影響を与える条件付き潜在成長モデル(conditional latent growth model)について扱います。冒頭のこの部分で、既に極めてマニアックな内容であることはご理解いただけるのではないでしょうか。

条件付き潜在成長モデル

今回のまとめは、先日の潜在成長モデルと同様に『発達心理学のための統計学』(宇佐美慧・荘島宏二郎著)を基にしています。同書の第6章の記述をまとめています。

まず条件付き潜在成長モデルのパス図を見てみましょう。

p.86

学生の読書時間が時点1から時点4までどのように線形で変化するのかを傾きと切片で説明し、それに対して部活動時間がどのように説明できるのか、を示すためのモデルといえます。

推定結果

潜在成長モデルと同様にこのモデルもSEM(構造方程式モデリング)を用いた分析なので適合度の指標が出てきます。たとえばCFIやRMSEAでモデルの収まり度合いを確認できるのがありがたいですね。

潜在成長モデルとの使い分け

では、潜在成長モデルと条件付き潜在成長モデルはどのように使い分けると良いのでしょうか。本書では両者の関係性についても比較しながら説明してくれています。

線形の潜在成長モデルでは、発達軌跡の切片や傾きの平均や分散を母数(たとえば、切片平均、傾き分散)として直接表現しました。一方、条件付き潜在成長モデルの場合、切片や傾きの因子の回帰式(たとえば、切片Iや回帰係数S)を推定しますが、切片や傾きの因子の平均や分散の情報は直接わかりません。したがって、たんに発達軌跡の平均ぞうや個人差を調べたいときは、線形の潜在成長モデルなど、これまで説明した潜在成長モデルが向いています。一方、発達軌跡の切片や傾きの個人差を他の説明変数を用いて調べたいときは、条件付き潜在成長モデルが向いています。実際には、たとえばまず線形の潜在成長モデルを用いて発達軌跡の個人差の大きさを調べてから、条件付き潜在成長モデルでその個人差を説明する変数を調べていく、という手続きを踏むことが多いです。

p.92

少々長いですがとてもありがたい説明なので引用しました。まず潜在成長モデルで検証した変数についての変化のあり方を明らかにし、そこでの個人差を説明する変数を条件付き潜在成長モデルが検証していく、というアプローチは合理的に思えます。

マニアックな内容で恐縮ですが、最後まで目を通していただき、ありがとうございました!

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