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【読書メモ】キャリア構成のケース研究法:『サビカス キャリア構成理論』(マーク・L・サビカス著)第2章

『サビカス キャリア構成理論』の第二章は、キャリア論の研究者以外の方は読まなくても良い章かもしれません。第三章から第六章までの四人を題材にしたキャリア・ケースについて、どのように対象者を選定し、どのような研究手法によって分析したのかについて解説されています。一般的には読み飛ばしても良い章ですが、個人的には興味深い内容だったので、特に印象的だった点について概説します。

十時点以上の縦断調査!

まず、本書で扱われる四人は、いずれもアメリカの白人男性なのですが、これは、ケース研究として成立させるために、年齢・人種・性別・文化的背景といった情報を統制しているためであるとの解説がされています。その上で職業発達に関する量的調査の結果として別のタイプに分類される四名を調査対象としています。

調査開始時期は対象者が14-15歳の学年の時点で、最終のインタビューの実施時は59歳であり、実に半世紀近くにわたる十時点以上の縦断調査、というものすごい壮大なインタビュー調査による蓄積によってケース化されています。第三章から第六章が読み応えのある物語になっているのは、こうしたプロセスの結果であり、年月と時間数を考えれば、本書はサビカス先生のライフワークとも言えるのかもしれません。

「捉われ」を意識する

四つのキャリア・ケースはいずれもディープな内容が含まれていて、読んでいてつらく感じる部分もあります。それでも、サビカス先生が重要だと信じてキャリア・カウンセリングとして実施しているのではないかと思える部分が多々あります。

その理由は何かと考えていたのですが、それは、サビカス先生のキャリア構成理論というカウンセリング経験の結果として結実した理論にあるのかもしれないと思いました。というのも、キャリア構成理論の基本的な考え方は、「捉われ(preoccupation)を職業(occupation)に転換することによって興味が形成され、職業選択が可能になる」(76頁)というものです。

本書で出てくる四つのキャリア・ケースでは、幼少期からの捉われについて、その後のライフキャリアでの影響や変化について丹念に描かれています。その物語を読み解いていると、自分自身のライフキャリアへの気づきにも繋がり、自分事としても読めるかもしれません。

第一章のまとめは後日!

変則的な順番ではありますが、ここまでで第二章から第七章までをまとめてみました。残りは第一章のみです。この第一章が最も難解で、しかしながら読み応えのある章なので、後日、時間をかけてまとめていきたいと思います。少しだけお待ちください!


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