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【論文レビュー】三時点調査での交差遅延モデルによる媒介効果の検証:鈴木&加藤(2019)

ざっくり定義で恐縮ですが、社会的ロールフルネス(rolefuleness)とは対人関係における役割意識に基づく満足感のことを指す概念で、社会的コンピテンスとは対人関係を構築する能力を表す概念です。本論文の結論を先取りすれば、高校一年時の社会的コンピテンスの不足が、高校二年時の社会的ロールフルネスを媒介し、高校三年時の不適応徴候被受容感の乏しさに影響することを明らかにしています。

鈴木美樹江, & 加藤大樹. (2019). 高校生における学校不適応感とロールフルネスとの関連――3 年間のデータを用いた交差遅延効果モデル分析による検討. パーソナリティ研究, 28(2)

交差遅延効果モデル

冒頭で記した媒介効果を明らかにするために、高校一年(T1)、高校二年(T2)、高校三年(T3)、という三時点での調査を基に以下の交差遅延効果モデルで明らかにしています。

鈴木&加藤(2019)p.173

まず、T1の「社会的コンピテンスの不足」からT2の「社会的ロールフルネス」へは1%有意水準でマイナスの関係があることがわかります。T2の「社会的ロールフルネス」からはT3の「不適応徴候」及び「被受容感の乏しさ」に0.1%有意水準でマイナスの影響を与えています。こうして、三時点での調査によって媒介効果を明らかにするデザインにしているのです。

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