見出し画像

【読書メモ】未来のシナリオ作り(7/9):M・サビカス著『サビカス キャリア・カウンセリング理論』(第7章)

前章までで、カウンセリングにおけるアセスメントの八つの要素のうち三つを扱ってきました。本章では残りの四つ目から八つ目が扱われます。それぞれポイントを見ていきましょう。

④場のアセスメント

まず四つ目の要素はに関するものです。第4章で扱ったインタビューの質問2として取り上げられていたクライエントが好きな雑誌、テレビ番組、ウェブサイトを手がかりに場の分析が為されます。

上記の質問2ではクライエントの興味が分かります。こうした興味が場につながるとサビカス先生は以下のように指摘します。

場を選択するとき、人々は自分に適したものを選ぶ以上のことをする。人は、そこで働いている人々との相互交流を通じて、こんな人になりたいという願望を選択するのである。(139頁)

場を選ぶことはクライエントの願望を選ぶことにつながるというわけです。質問2に基づくクライエントの興味を足掛かりにして、カウンセラーは場をアセスメントします。

⑤台本のアセスメント ​

五つ目の要素である台本は、第4章で扱ったインタビューの質問3として取り上げられていた好きなストーリーに対応します。サビカス先生によれば、クライエントが選ぶ好きなストーリーにはクライエント自身の現状が含まれます。ストーリーは、クライエントの一連の主題を表すため、前章で扱ってきた自己と④の環境とが接合されるダイナミックなものです。

クライエントによる好きなストーリーの要約は、ロールモデルの中で描かれた自己と、好きな雑誌やテレビ番組によって示された社会的な居場所を一体化させる。それは人生の異なる要素をダイナミックな全体性へと統合し、個人的な関与を社会という世界の中の認識されうるロールにつなぐ。(148頁)

台本には、クライエントの視点を未来へと向ける影響力があります。したがって、カウンセラーは、クライエントが小さな台本を創るのではなく、可能性に対してオープンになり大きな台本を描けるように支援することが求められます。

⑥エピソードの命名

エピソードは、第4章のインタビュー質問4であるモットー(指針となる言葉)に対応するものです。これは、クライエントが行動に移ることを支援するために、行動へと導くための言葉を描き出すことが目的です。モットーを足掛かりにすることで、クライエント自身の中に行動の起点となるものがあったのだということに気づいてもらうことがカウンセラーには求められます。

⑦未来のシナリオを書く

⑥までで主体的にキャリア構成を行う段階はおしまいです。⑦では、具体的な第一歩としてのシナリオ作りとなります。ここで、サビカス先生のキャリア構成理論ではあまり重視されていないように見られた(私の誤解?)ホランドの仕事環境分類法をはじめとしたパーソナリティ分類法がヒントになるとしています。つまり、⑥まででクライエントの自身のキャリア構成を踏まえて、自分自身と職業とのマッチングをテストするというわけです。

⑧カウンセリングの来談目的に戻る

カウンセリングの主体はクライエントにあります。クライエントに目的があってはじめてカウンセリングが生じると言えます。したがって、⑦で最初の一歩が描けた後に、改めてクライエントの来談目的に立ち戻ってカウンセリングが無事に終わることになります。


いいなと思ったら応援しよう!