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【読書メモ】対話の力ーー明日を創る試み:『あなたへの社会構成主義』(ケネス・J・ガーゲン著)[第3章]

社会構成主義は言葉によって世界が生成されるという考え方を取ります。言葉は、他者とのコミュニケーション手段であり、他者と理解を共有するためのものです。本章では人と人との対話に焦点が当てられていて、三つの観点から対話について述べられています。

①構造としての対話

安定的に繰り返して対話の中で発せられるまとまりとしての構造として、メタファー(比喩)ナラティヴ(語り)が挙げられています。まずメタファーについてですが、第1章で著者は、事実を言語が正しく描写できるという見方を否定していました。このことはすなわち、すべての言葉にはメタファーの要素が含まれていると考えられます。事実と言語が一対一対応しないのであれば、比喩の要素が入っていることを表すということです。

また、単独の言葉だけで他者にイメージを共有することは難しいものです。そこで大事になるのがナラティヴです。よく伝わるナラティヴの特徴としては(1)収束ポイントがあること、(2)収束ポイントに関係する出来事が配列されていること、(3)それぞれの出来事が順序立てられていること、(4)因果関係が存在すること、の四つがあるようです。

②説得としての対話

構造としての対話の一つの形式として説得(レトリック)があります。客観的であると私たちが認識するレトリックとして、(1)対象と距離を置くレトリック、(2)権威を打ち立てるレトリック、(3)レンズを浄化するレトリック、塔三つが挙げられています。

③プロセスとしての対話

①と②が構造、すなわち対話のWhatに焦点が当たっていたのに対して、対話にはプロセスの側面もあります。つまり、対話の一瞬一瞬で世界というものは動態的に生成されるという考え方です。①②が世界の安定性に基づいた対話の構造であったのに対して、③は世界の可変性に基づいた対話のプロセスに焦点が当たっていると考えれば良いのではないでしょうか。


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