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【読書メモ】ウィスキーを嗜むための先行研究!?:『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』(村上春樹著)

ビール党および日本酒党からウィスキー党への転向宣言(?)をSNSで行ったところ、何名かの方々からコメントをいただきました。その中には中原先生からのものも含まれていて、「先行研究をたどりましょう。」とのコメントと共に本書を勧められました。わりと好きなプロセスなのでさっそく先行研究してみた結果をご報告します。

ハードルの高さの原因

ウィスキーを日常的に飲むようにするためには心理的なハードルが高いと思っていましたし、今でもまだ感じています。産地とか、年数とか、あまりに種類が多くてとっかかりづらいんですよね。さらに言えば、最も大きなハードルの高さは以下でした。

シングル・モルトの世界には、ワインと同じように、パーソナリティーというものが厳然と存在する(想像がつくように、それは蘊蓄の温床ともなりうる)。だからスコッチには氷を入れてもいいけれど、シングル・モルトには氷を入れてはいけない。

p.26

下手をするとウィスキーに関する知識は「蘊蓄の温床」になりかねないですよね。神戸で私にウィスキーを勧めてくださったかつての上司と斜め上の上司のお二人の話は絶妙でためになったので、だからこそこうしてウィスキーを飲もうとしています。

ただ、良いアドバイスと蘊蓄の差は薄皮一枚くらいしかないのかもしれませんし、なにもウィスキーに限られた話ではないでしょう。自身が詳しいトピックスについては、蘊蓄の披露になっていないかどうかを意識することは大事ですよね、自戒を込めて。

いかにも村上春樹さんな一節

本書の前半はスコットランドのアイラ島でのウィスキー旅で、後半ではアイルランドを訪れています。アイルランドでの旅も味わい深く、特に以下の箇所は著者のテースト満載な書きっぷりです。

でもいずれにせよ、彼はタラモア・デューを飲む合間に何かを熱心に考えていたし(または、何かを熱心に考える合間にタラモア・デューを飲んでいたし)、それはどちらかというと形而上的なーーあるいは反プラクティカルなーーものごとについての綿密で実証的な考察であるように、僕には感じられた。なんとなく。

p.89

こういうところを読むと村上春樹さんの文章を読んでいるのだなーと実感します。ハルキストにはたまらない部分ですね。

ウィスキーを飲む旅に出たくなる書

本書を読み終えた後、冒頭で書いてあった以下の箇所を思い返しました。

ささやかな本ではあるけれど、読んだあとで(もし仮にあなたが一滴もアルコールが飲めなかったとしても)、「ああ、そうだな、一人でどこか遠くに行って、その土地のおいしいウィスキーを飲んでみたいな」という気持ちになっていただけたとしたら、筆者としてはすごく嬉しい。

p.10

完全に村上春樹さんの思惑にハマり、ウィスキーを飲む旅に行きたくなりました。なんなら、本書を読んでいる途中の時点で白州蒸溜所にはどうやって行けるのか、近くのホテルはどのような感じかを調べたくらいです。日本酒も酒蔵に行ってからさらに好きになったので、ウィスキーの蒸溜所もいつか訪れたいものです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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