【読書メモ】『サビカス ライフデザイン・カウンセリング・マニュアル キャリア・カウンセリング理論と実践』(日本キャリア開発研究センター監修)
サビカス先生のカウンセリングに関する実践的なガイドブックと言える一冊です。キャリア構築理論に基づいたカウンセリングの考え方をサビカス先生自身が解説している第6章をまとめます。ポイントは、書名にもある通り、ライフまでを含んだライフキャリアをデザインすることが描かれています。
サビカス先生がキャリア構築理論を提示した背景は、端的に言えば、社会やビジネスの変化が速くなり、それに対して働く個人が適応することが求められるようになったからです。もっと詳細を知りたい方は、以前も解説したのでご笑覧くださいませ。
アイデンティティ・ナラティヴ
キャリア構築理論って面白いなぁと最近よく読むのですが、ちょっとサビカス先生は言葉を乱立してくる印象があり少々困ってます。。本書ではアイデンティティ・ナラティヴという言葉を重視されているようで、要はマクロ・ナラティヴと同じ意味合いのようです。
マクロ・ナラティヴとは社会環境における自己の小さなストーリーで、一つひとつのマクロ・ナラティヴが紡ぎあげられてアイデンティティ・ナラティヴ(マクロ・ナラティヴ)が構築されるという関係性です。
アイデンティティとライフデザイン
では、アイデンティティはどのように形成されるのでしょうか。サビカス先生は、自己とアイデンティティの違いと、アイデンティティ形成のプロセスを以下のように端的に解説しています。
アイデンティティ形成は、自己という主題(self=自己)が社会という反主題(role=役割)に出会い、統合を造り上げる(=アイデンティティ形成)といえる。(83頁)
アイデンティティは、仕事の関係性だけで形成されるのではなく、日常生活や社会活動においても形成されます。したがって、キャリア構築とはすなわちライフデザインであるという結論をサビカス先生は提示しています。
ライフデザインは、社会構成を計画するという視点から、クライエントを著者と見なして、自伝的なストーリーを語ることよって(原文ママ)特色づけられる。この著者を援助する方法は、キャリアを構成する人生テーマについて省察を促すことである。(91-92頁)
この辺りの話は、ワークとライフをバランスさせるのではなく、ワークとライフの統合を図るという話とも関連してきそうですね。