見出し画像

【超訳】サビカスのキャリア理論(9/14)

後期青年期や成人期以降に当たる思慮分別期(self-conceiving)についてサビカス先生が語る箇所のポイントについて見ていきます。これより以前の時期では、自己を主体として捉えた他者との相互作用が主に描かれてきましたが、思慮分別期では、主体および客体としての自己のありようが自伝の著者という形容で述べられています。

まず、思慮分別期における前提となる考え方としてサビカス先生が提示しているものを見てみましょう。

思慮分別期の前提

(原文)
Social actors who pursue goals can deliberate as an autobiographical author to conceive a vocational identity and compose a career story that imposes continuity and coherence on their actions over time.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL翻訳)※一部引用者修正
目標を追求する社会的行為者は、自伝の著者として職業的アイデンティティを構想し、時間の経過とともに自分の行動に連続性と一貫性を付与するキャリアストーリーを構成するために熟考することができる。

思慮分別期における前提では、相互作用というダイナミクスに加えて、その連なりから描かれる安定的な物語が現出してくることが特徴的と言えそうです。動作をする主体と、その経験を振り返ることで描かれる客体とが生じる時期と言えそうです。

G・H・ミード的な"I"と"Me"!?

(原文)
(28) the subjective "I" deliberates on the objective "Me" to author a career story about the self as a social actor and motivated agent.
Savickas(2019)、30頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(28) 主観的な「私」が客観的な「私」について熟考し、社会的な行為者および動機づけられた行為者としての自己についてのキャリアストーリーを形成する。

主体と客体から「私」を捉えることで自身のキャリアの物語を構築することが提示されています。ここでの主体とか客体というくだりは、プラグマティズムの影響が感じられ、個人的にはG・H・ミードあたりなのかなぁと考えながら読んでいます。

外への対応ではなく内と外の統合

(原文)
(29) With the self-conceiving process of composing a career story, individuals declare a vocational identity that presents an argument justifying occupational choices by relating their private inner world to the public outer world.
Savickas(2019)、31頁
(DeepL先生訳)※一部引用者修正
(29) キャリアストーリーの構築という自己認識のプロセスにおいて、個人は、私的な内的世界と公的な外的世界とを関連づけることによって、職業選択を正当化する論拠を提示する職業アイデンティティを宣言する。

ここ、けっこう重要なことがサラリと述べられています。まず、個人は外的環境に対して適応するわけではありますが、受身的な意味合いではなく内と外を統合するというダイナミックなプロセスであるとサビカス先生はしています。キャリアの物語を構築することでこのプロセスをすすめるということを述べているわけです。

仕事の役割に自己を位置付ける

(原文)
(30) This career positioning, whether in aspiration or actuality, locates a vocational identity in a particular occupation, that is, self-in-a-work-role.
Savickas(2019)、31頁
(DeepL先生訳)
(30) このキャリア・ポジショニングは、願望であれ現実であれ、職業的アイデンティティを特定の職業に位置づけるものであり、すなわち、仕事上の役割における自己である。

「self-in-a-work-role」という表現がいいなぁと感じます。そして、これをDeepL先生は見事に「仕事上の役割における自己」という見事な訳出をしているのがすごい(笑)。キャリアの物語構築による内と外の統合を基にして、現在の特定の仕事において自分自身をどのように位置付けるかという動的なプロセスをサビカス先生は提示していると言えそうです。自分で書きながら、この箇所好きだなぁとしみじみと感じます。しつこいっすね(笑)。


いいなと思ったら応援しよう!