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【読書メモ】組織はどのように成り立っているのか?:『組織論の名著30』(高尾義明著)

高尾義明先生の『組織論の名著30』の第3章「合理的システムとしての組織」では、『組織デザイン』(沼上幹著)、『組織は戦略に従う』(チャンドラー著)、『行為する組織』(トンプソン著)、『市場と企業組織』(ウィリアムソン著)、という4冊の名著が解説されています。

組織デザインの原理原則

本章の冒頭で取り上げられているのが沼上先生の『組織デザイン』であるのは個人的には感慨深いです。

沼上先生には講演等も含めて全くお目にかかったことがないのですが、本書は何度も読み直した書籍です。新卒入社2年目に手に取りましたが、入門書なので読みやすくむさぼるように読んだ記憶があります。

そのような個人的に印象深い本なので高尾先生がどのように書かれているのか興味があったのですが、これまで何度も書いている通り、さすがの要約です。

 本書はタイトルの通り組織デザインを扱っているが、組織の特徴とは分業と調整の二つであり、それらのパターンが組織デザインであるとされている。

p.90

このような簡潔にして的を射たリード文を書けるようになりたいものです。

標準化を基礎とした事前の調整とヒエラルキーの設計に基づく事後の調整を組み合わせた、日常的なオペレーションを円滑に遂行できるような組織デザインを本書では組織の基本モデルと呼び、それを現実に適用するための基本原理の説明が本書の中心的な議論である。

p.93

ここまで書いてくださった内容を踏まえて本書を読むと、理解がより進むのではないでしょうか。

実践での学び

組織デザインについて思い返す中で、某社の生産部門でのHRBP時代、一度だけ大規模な組織変更PJを主要メンバーの一人として携わったことを思い出しました。その企業は外資だったため、グローバルからトップダウンで至上命題が来て、それに合わせた組織デザインを行うことになりました。指示内容に従って組織デザインの原理原則に則れば粛々と行える、というものでは全くないことを嫌というほど経験するものでした。

24時間操業の製造工場だったため、3交代制ができるようにマネジャーのローテーションが必要になります。また、製品の品質・製造プロセスに厳格な業界だったため、こうした専門的な資格を有する人材が配置されていなければならないラインもありました。加えて、スタッフィングの際にはマネジャーやメンバーの経験や力量、さらには相性も考えなければなりません。そうすると一部の優秀でパフォーマンスの高いマネジャーにメンバーが集まってしまいすぎ、スパン・オブ・コントロールの観点から考え直す、というループに入ります。

つまり、組織デザインは静的なデザインの性質と、動的なデザインの性質とがないまぜになる生物なのです。このような現実的な話も実は高尾先生は解説してくださっています。

本書では、組織デザインに過剰な期待を抱きすぎないよう警鐘を慣らしつつ、分業や調整の原理原則を理解しつつ、現実に合わせて折衷主義的にふるまうことが組織デザインに必要であると主張している。

p.96

良書を読むこと、また良書の優れた解説書を読むことは、現場での実践にもいきるものなのです。

機能別組織と事業部制組織

卑近な例として挙げた私のHRBP時代の組織は機能別組織でした。他方、組織構造における機能別組織と対比される主要な一つに事業部制組織があります。事業部制組織に焦点を置いて書かれた名著がチャンドラーの『組織は戦略に従う』です。

機能別組織とは、メーカーで喩えれば製造、販売、研究開発といった職能に基づいて部門化された組織構造である。一方、事業部制組織は、製品などによって部門化された事業部が設置され、事業部内に製造、販売、研究開発といった当該事業を遂行するために必要な職能が含まれているという形態である。(中略)
これらの組織形態、とりわけ事業部制組織がいつどこでどのように生み出されたのかを、比較経営史の手法によって明らかにしたのが本書である。

p.97-99

チャンドラーのこの本が好きで、最初の修論の冒頭で引用したんですよね(遠い目)。高尾先生の素晴らしい解説も読んだので、時間ができたら読み直そうと思います。

最後まで目を通していただき、ありがとうございました!

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