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【記事まとめ】組織コミットメント

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組織コミットメント関連の論文・書籍のレビューをまとめてみました。
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【読書メモ】組織コミットメント、ジョブ・エンベデッドネス:服部泰宏著『組織行動論の考え方・使い方』[第10章]

組織コミットメントをもっと先行研究せねばとなりまして、真っ先に読もうと思い浮かんだのが、以前も読んで感銘を受けた服部泰宏先生の『組織行動論の考え方・使い方』です。企業人事にとって、これほど読み応えのある書籍というものはなかなかございません。 第12章を中心にまとめた以前のnoteは以下となりますが、今回は組織コミットメントが取り上げられている第10章をまとめます。 持つべきは同期の縁私はこれまで、同期と呼ばれる存在にいつも助けられてきました。学校でも企業でも、いずれのタイ

【論文レビュー】キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントの関係性:Nyathi & Oosthuizen(2023)

キャリア・アダプタビリティと組織コミットメントとは正の相関関係があることが先行研究でも言われています。キャリア採用/入社が日本の雇用社会ではメジャーではなかった時代には両者が関係することは意外に思われたようです。しかし、日本においても堀内先生と岡田先生が2009年の論文でキャリア自律と組織コミットメントとの関係性が検証された頃から、まあ関係性はあるよね、という感じになってきていると思います。 キャリア自律と組織コミットメントキャリアのワークショップを社内で企画すると、「寝た

【論文レビュー】集合的感謝は情緒的コミットメントにどのような影響を与えるのか?:正木・村本(2021)

職場レベルでの感謝の度合いを示す集合的感謝という概念があります。本論文では、職場における集合的感謝がそこで働く人々の情緒的コミットメントにどのような影響を与えるのかを検証しています。 感謝の定義日常において感謝という言葉はよく使われます。学術的にはどのような定義になっているかというと、著者は先行研究を踏まえて「社会的交換関係において自身に利益をもたらした他者の行動に対して、受け手が抱く肯定的な感情反応」(p.21)としています。 利益という言葉を見ると、なんだかドライな感

【論文レビュー】組織コミットメントと勤続年数の関係:Beck & Wilson(2000)

新しい組織に入った後、私たちの組織コミットメントはどのように変化するのでしょうか?勤続年数と組織コミットメントの関係性について、少々特殊な組織で検証している論文を今回は見ていきます。 組織コミットメントと勤続年数本論文では、組織コミットメントと勤続年数の関係について先行研究を行っています。そのまとめとしてはポイントは以下の2点です。 新しい組織に参画した直後には組織コミットメントは急激に低下する その後は組織コミットメントは高くなっていく 調査対象本論文の対象はオース

【論文レビュー】組織コミットメントに関する代表的なメタ分析論文:Mathieu & Zajac(1990)

組織コミットメントは1980年代にかなり研究が増えました。本論文では、その時代における先行研究をメタ分析した論文です。組織コミットメントが何から影響を受け、何に影響を与えているのかが明らかにされています。 先行変数との関係以下が組織コミットメントと先行変数との相関に関するメタ分析の結果です。 これをみてわかる方には以下の説明は不要です。読み飛ばしてください。ちょっと値が多すぎて、、、という方に向けて書きますと、様々な指標が書かれていますが戸惑うことはありません。ざっくりい

【読書メモ】組織コミットメントの代表的な二つの理論モデル:『組織と個人 キャリアの発達と組織コミットメントの変化』(鈴木竜太著)

組織コミットメントが何から影響を受けて何に影響を与えるのかを調べたく、鈴木竜太先生の『組織と個人 キャリアの発達と組織コミットメントの変化』をだいぶ久しぶりに読み直しました。先行研究パートをもとに、組織コミットメントの先行変数と成果変数についてまとめます。 組織コミットメント研究の黄金時代!?本書の先行研究パートでまず登場するのはMowdayやMeyerやAllenです。いずれも1980年代から1990年代にかけてよく出てくる組織コミットメント研究の大家中の大家です。さなが

【論文レビュー】リアリティショックと組織コミットメントの不思議な関係!?:Dean et al.(1988)

職業柄(研究柄?)、リアリティショックに関する設問を読み込む機会があり、設問文という極めて具体的な文言を読んでいると、リアリティショックという概念って改めてなんだっけ?というゲシュタルト崩壊的な感覚に陥りました。今回は、古典的なリアリティショックの実証研究を取り上げます。 リアリティショックとはリアリティショックは、新しい組織での現実に直面した際に私たちが感じるショックです。本論文では、リアリティショックを以下のように定義しています。 こちらについては尾形真実哉先生が『若

【論文レビュー】組織アイデンティフィケーションと組織コミットメント:高尾(2013)

本論文では、組織アイデンティフィケーションを「組織との一体性(oneness)や組織に帰属していること(belongingness)に対する認知」(66頁)と定義されています。では、こうした組織との一体感のようなものと組織コミットメントとは異なるのでしょうか。高尾先生は、先行研究レビューを行い、日本での実証研究を紹介したうえで、両者は異なるものと捉えるべきであると結論づけています。 高尾義明. (2013). 組織アイデンティフィケーションと組織コミットメントの弁別性-日本

【論文レビュー】「組織コミットメントは三次元から成り立ちます」と決定付けた論文:Meyer et al. (1993)

組織コミットメントは、①情緒的(affective)、②継続的(continuance)、③規範的(normative)という三つの次元で構成される概念です。という考え方が現時点でも組織コミットメント論の主流なのですが、それを決定づけた存在が本論文です。 Meyer, J. P., Allen, N. J., & Smith, C. A. (1993). Commitment to organizations and occupations- Extension and t

【論文レビュー】組織コミットメント研究史:高橋(1997)

本論文は組織コミットメント研究に関するレビュー論文です。組織コミットメントの定義としては「ある特定の組織に対する個人の同一化(identification)および関与(involvement)の強さ」(Porter et al. 1974)を用いています。 Mowday et al.(1982)によれば、組織コミットメントが高いメンバーは、①当該組織の価値観や目標の強い受容および信念、②自らを組織の代表とみなして行う多大な努力、③当該組織への引き続いての所属を希望する強い意

【論文レビュー】組織コミットメント研究の古典的論文:Porter et al.(1974)

組織コミットメントの定義は、本論文で言及されているものが現在においてもよく用いられます。そうした意味で古典的な組織コミットメントの論文と位置付けられるものでしょう。意訳的に書けば、組織コミットメントとは「所属する組織に対して感じる一体感と巻き込まれ感の強さ」(604頁)を指すものです。 Porter, L. W., Steers, R. M., Mowday, R. T., & Boulian, P. V. (1974). Organizational commitment

【読書メモ】(1/8)組織のなかの人間心理:『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(高木浩人著)

組織で働く人の心理に焦点が当たったのはホーソン研究であると言われます。本書のタイトルにもある心理的側面への着目について、ホーソン研究にも深く関わっているメイヨーの考察から本書は始まります。 ホーソン研究とはなんだったのか1927年から1932年までの約五年間をかけてウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で行われた一連の研究では、物理的な作業条件が作業の能率性にどのような影響を与えるかが研究目的でした。しかしながら、作業条件ではなく人間の社会的な関係性が作業の成果に影響を

【読書メモ】(2/8)概念の把握と多次元性:『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(高木浩人著)

第2章では、組織コミットメントという概念を研究者がどのように把握しようとしてきたのかの努力の歴史が解説されるという、後から研究する者にとっては垂涎ものの章です。 以前、服部先生の書籍を基に概説した通り、単一次元から多次元構成へと至る流れが詳しく述べられています。 単一次元時代 後続する組織コミットメント研究者に最初に大きな影響を与えたのはベッカーであるとしています。著者によればベッカーは、組織コミットメントを「組織と個人の交換関係の上に成り立つ」(34頁)ものと捉えました

【読書メモ】組織コミットメントは態度or行動!?:高木浩人著『組織の心理的側面 組織コミットメントの探求』(3/8)

第2章では組織コミットメントをどのように捉えるかがテーマでした。第3章では、組織コミットメントが個人の態度で形成されるのか、あるいは行動によって形成されるのか、という二つのアプローチが対比的に論じられます。 態度 vs. 行動の背景 態度的コミットメントと行動的コミットメントの二つの概念の相違は、そのコミットメント研究がどの研究領域から出てきているのかを反映していると著者はしています。 組織行動の研究者たちは、コミットメントを労働者が組織の目標や価値を内在化していく過程を