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ラストマイル

本作は2本のテレビドラマ「アンナチュラル」、「MIU404」と世界観を共有するクロスオーバー作品だ。マーベルやDCのコミックを映画化した作品で複数のシリーズのキャラが絡む作品をよく見かけるがそれと同じようなものだ。

どちらのドラマも自分は見ていなかったので、思いっきりヒマにでもならない限り、本作は見なくても良いかなと思っていた。

ところが、観客動員数ランキングで初登場1位を記録し、2週目も首位をキープ。興収は既に21億円を超えてしまった。
現時点では今年公開の実写日本映画では4番目のヒット作となっているが、9月公開作品でライバルとなりそうのは三谷幸喜の新作と「プリキュア」の最新作くらいしか見当たらない。そう考えると、配給サイドが予想興収としてあげている50億円どころか、それ以上の成績も期待できるのではないかという気がして仕方ない。74億円の「キングダム」4作目を超すのは難しいだろうが、それに次ぐポジションには到達できそうだ。

となると、映画に関してああだこうだ言っている自分のような人間にとっても無視できる作品ではなくなってくる。

そんなわけで急遽見ることにした。

ツッコミどころは満載だった。

本作の舞台となる巨大な倉庫を持つネット通販企業のモデルとなったのは誰が見てもアマゾンだと思う。繁忙期に季節労働者的な派遣社員が大量に増えるという描写は明らかにアマゾンだ。もっとも、日本では普通は派遣社員ではなくてバイトだと思うし、作中でも土日のみ働く人がいるとか言っていたので派遣ではなくバイトと呼ぶべきではないかと思う。

それから、このアマゾンもどきの企業が世界中が新機種を出すたびに注目するスマートフォンを販売しているという描写もあるが、この部分はアップルを意識しているのだろう。

そして、日本映画、しかも、キー局制作の映画なので、アマゾンもアップルも実名で出てこない。そのくせ、DHLは実名で出てくるのは、おそらく、タイアップしているんだろうなというのが見え隠れしていて、正直なところ興醒めしてしまう。

でも、クソ映画かと言うとそうではない。

テレ東やNHKが得意とする経済ネタのドラマや、TBSやWOWOWが得意とする企業奮闘ものが好きな人なら多分、楽しめるのではないかと思う。

というか、この映画のコアな観客層となっている20代女子よりも、経済ニュース大好きなアラフォー以上のおっさんのネット民の方が楽しめるのではないかと思う。

物流の2024年問題に合わせて企画されたストーリーだとは思うが、このことにすぐに気付けるのはネット民だからね。

①外資系を中止とした大企業の横柄な態度、隠蔽体質。

②元請け企業の丸投げ体質。

③金銭面でもシフト面でもブラックな下請けの雑な仕事ぶり。

どれもリアルに描かれている。

①については、外資系の日本法人って本国よりも劣化しているケースが多いよねというのを改めて実感した。
本国ではポリコレにうるさい、ネトフリもアマゾンもディズニーも日本に来ると差別全開のネトウヨだからね。
本作はそんな酷い日本法人の実情を調査するために本部から派遣された“スパイ”の話でもあるしね。

②が発注元の言いなりになり、一般社員や③に丸投げしているところはこれぞ日本企業って感じだった。

③に関してはつらいのは分かるけれど、すぐに荷物を落とすし、預かった荷物がすぐそばにあるのに平気で喫煙するしといったマナーがなっていない連中の描写がリアルだった。

①、②、③のどれかだけを悪人にしたり、善人にしたりすることもなく、どのステージにも問題があるし、どのステージにも環境を良くしようと思っている人はいると公正中立に描いているのは評価していいと思う。

ありきたりな映画だと、外資系・大手企業は人間性がない、寝る暇を惜しまず低賃金で働く下請けは素晴らしいみたいな描写になりがちだからね。

そうそう!企業や警察の大本営発表にさからえないマスコミの様子もよく描けていたと思う。


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