見出し画像

暫く振りの「おく」

かなりの頻度で見てきたパフォーマンスアート「おく」。
久しぶりにギャラリーでやるというので、一人でのこのこ西麻布まで出かけた。狙っていたバスを逃し、JRの駅からとぼとぼ歩いたのはご愛嬌である。

「おく」を実践している「Oku Project」は、板倉諄哉、藤中康輝、金森由晃という同郷の三人が二〇一七年から始めたアートユニット。

「おく」は、本当にただ「物を置く」行為を繰り返す実践。向き合う二人が一五手(←たしか)ずつ、交互に物を置いていく。このことによって、プレーヤーの中に、あるいはプレーヤーの関係性の中に、そして「おく」を鑑賞する人々の中にさまざまな事象が浮かび上がっては去っていく。

私が言えるのは唯一、鑑賞者の立場でということだが、置かれた物たちを必死に解釈しようとし、勝手にそこにある世界を理解したと錯覚したとき、ニヤリと小さな充足感に満たされるということだ。が、しかし、実際はなぜその物がそこに置かれたのかなんて、置き手でおるプレーヤーその人にしかわからないのだ。それが積み重なっていくことで解釈ののりしろが生まれ、誤読という快感の余地が与えられる。

今回、私が拝見したのは、たしか建築関係の仕事をされている方と、藝大の先端芸術で助手を務めながら自らも作家としてアニメーションを手掛けているお二人だったかと思う。この二人のプレーは、長時間にわたった。痺れた、見る方の脳が。

建築関連の方の初手からして、これまで見てきた「おく」とは全く違う世界が現れた。ギャラリーの床に対して、しっかりと領域を設定したのだ。その後も幾手か彼は結界を強固にすべく糸などを張り巡らしていく。

一方、藝大の彼は、その領域の中で流れ、あるいは動きをつくり出すように物を置いていく。構造的なものに対する流動性、フローなどの提示。

緊張感に溢れたまま長考、そして一手が繰り返されていく。二人の最後の一手が終わったときには、一時間半ちかい時間が流れていたのではないか。

二度と同じものが生まれることのない儚い思考の残骸がそこにあった。

「GAIEN-NISHI ART WEEKEND」における「おく」パフォーマンス
会場:CALM & PUNK GALLERY
日程:2024年4月5日(金)〜4月6日(土) 会期終了


いいなと思ったら応援しよう!

TABU
サポートしていただけたら、小品を購入することで若手作家をサポートしていきたいと思います。よろしくお願いします。