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2020.4.12(日)「新生音楽(シンライブ)」MUSIC AT HOME 配信の日
曇り。
ある動画が大量にシェアされてきて、どんよりとした気持ちになる。
もうツイッターをやめようか、とすら思うほどに、SNSはずっと、不安や怒りに満ちている。特に僕がフォローしているのは、フリーランスやアーティストがほとんどだから、致し方ない。
ふと、最近撮った写真を連続で投稿する。
淀んだ空気を換気するように、せめて自分のタイムラインだけでも。
夜には大事な配信を控えている。気持ちを切り替えないと。
午後、録画してあった東北と熊本のユースオーケストラが共演した日のドキュメンタリーを観ていた。新緑のようなみずみずしい演奏に心を打たれる。
終盤、「戦場のメリークリスマス」が始まった。
「Avec Piano」のカセットを聴いていた高校生の自分と、初めてのワールドツアーでギターで「戦メリ」のイントロを弾いた30歳の自分がフラッシュバックして、ボロボロ泣く。心の底に溜まっていた澱を洗い流すために、思う存分泣いた。
悲しいことがあるのに、泣けない時がある。大人のペルソナを脱ぎ捨てる事ができない時や、しばらく泣くのを忘れて心が固まっていることもある。映画や音楽はそんな時、心の扉にかかっていた鍵をそっと外してくれる。みんな部屋にいるのだから、涙が出そうな時は思い切り泣いたらいい。
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今回の「新生音楽(シンライブ)」MUSIC AT HOME の計画は、刻々と変わっていく世の中に急かされるように、突貫工事で進められた。自宅待機の要請が強まり、1回目の「新生音楽」と同じ形で大勢のスタッフを集めたスタジオライブ配信はもう出来ないと結論したのが先月末。自撮りしてもらった動画を繋ぐ形式で配信しようと決めたのは4/3(金)。出演者への交渉が始まったのは4/5(日)。そこからわずか1週間での配信。急にも程がある(スミマセン)
当初「もしアーティストが10人集まらなかったら中止」という前提からプロジェクトはスタート。ところが嬉しいことに少しずつ少しずつ輪は広がって、配信が発表された4/10(金)の翌日にも賛同アーティストは増え続け、最終的には17組・18人が参加してくれることになった。最終的に、最年長の鈴木慶一さんから最年少は高校生のKEEPON君まで、豪華で層の厚いラインナップになった。
前回の配信ではオープニングテーマが流れる「開演」時間がとても重要だったので、今回もテーマ曲を録り下ろすことにした。8日(水)から録音を始めて延べ3日弱くらい。幸い時間だけはたっぷりある(笑)。YMCのライブ盤で鍛えたミックスのスキルが役に立った。
映像スタッフは、動画を番組として見応えのある形で届けるための演出を、ぎりぎりまでいろいろ考える。でも、ガチガチに決め込んだテレビ番組のようにするつもりではなく、DIYの風味を残しつつ。
参加アーティストから、愛のこもった動画が次々届く。それぞれが、それぞれの持ち場で、みんな楽しんでいる。お金にはならない仕事。ただ、音楽のために、いい作品をつくるためだけに。
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さあ、だんだん気分も上がってきたぞ。
夜、配信準備。アーティストが自宅で撮ってくれた動画をリレー形式で繋ぐ配信フェス。僕は演奏の他に、緒川たまきさんと一緒にMCで生出演。自分の部屋からネットで繋いで、声だけの出演。ラジオの生出演の気分。
「開演」時間にYouTubeのチャットにも参加しつつ、ゆったりとしたテンポで番組はスタート。緒川たまきさんとは対談イベントやレコーディングの現場などで最近たまに会っていたけれど、一緒にMCをするのは1995年の教育テレビ(現・Eテレ)「土曜ソリトン Side-B」以来、なんと25年ぶり。不思議と始まってしまえばあの頃の呼吸が自然と戻ってくる感じ。打ち合わせは段取りの確認だけで台本もないフリートークなのに、安心感がある。
演奏が始まると、立場を忘れて食い入るように見入ってしまった。ステージとは違う自宅ならではのリラックスしたムードで、すぐ目の前から届けられる歌は、物語であり、風であり、光であり、祈りだった。それぞれの部屋や歌の趣の違いも味わい深く、みんなの家にお邪魔した気持ちになれる。
MCとしては本当は一人ひとりの演奏にちゃんとコメントしたかったけれど、限られた時間の中であれこれ言いたい気持ちをぐっとこらえて、できるだけ司会に徹する。
2時間のコンサートは、気づけばあっという間だった。最後に僕らはこんな事を話した。「楽しかった!こんな配信またやりたいけど、それは事態が収束しないことを願うことにもなるから、難しいね...」
映像配信のスタッフが当日3人だけスタジオに集まった他は、すべての出演者やスタッフが在宅のリモートワーク。配信が終わって、中継を繋いでいたZOOMでお疲れ様を言い合って回線を切ったら、夢のような宴からあっという間にいつもの部屋に戻った。
それじゃあんまりなので、夜中に2時間くらいZOOMでスタッフと飲み会。いい仲間!
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今回の配信に参加してくれたアーティストたちは全員、無償で自分たちの意思で参加を決めてくれました。
「アーティストに還元したいから投げ銭したかった」という声も沢山頂きました。でも今回はあえて収益化をしませんでした。その代わり、気に入ってくれたアーティストの音楽をもう一度聴いたり、それぞれのサイトを訪問してグッズを買って応援していただけたら幸いです。音楽が皆さんの時間を潤す糧になってくれること、それが僕ら音楽家にとっては一番嬉しいことです。
配信のアーカイブは、この騒ぎが収束してリアルなライブが再び開ける時まで、残しておく予定です。
最後に。
急な申し出に快く応じてご協力くださったアーティストと事務所の皆さん、告知にご協力くださった皆さん、ミュージシャンたちへの声がけに協力してくださった原田郁子さん、そして観てくださった皆さんへ、
ありがとうございました。
曽我部恵一(サニーデイ・サービス) http://www.sokabekeiichi.com/
優河 https://www.yugamusic.com/
高田漣 https://rentakada.com/
青葉市子 https://www.ichikoaoba.com/
浜崎貴司(FLYING KIDS) http://hamazaki.org/
<物販> http://aogmarket.jp/category/hzt/
寺尾紗穂 http://www.sahoterao.com/
おおはた雄一 https://yuichiohata.com/
青柳拓次 https://www.facebook.com/takujiofficial
KEEPON https://panda4x4.wixsite.com/keepon
角銅真実 https://manamikakudo.wordpress.com/
スネオヘアー https://www.suneohair.jp/
折坂悠太 http://orisakayuta.jp/
butaji https://butaji.bandcamp.com/
君島大空 https://ohzorafeedback.wixsite.com/hainosokomade
鈴木慶一 http://www.keiichisuzuki.com/
塩塚モエカ(羊文学) https://hitsujibungaku.jimdofree.com/
七尾旅人 http://www.tavito.net/
高野寛 https://www.haas.jp
新生音楽(シンライブ)の情報発信部 https://twitter.com/SINLIVE_info
*書き下ろしオープニングテーマ曲「MY HOME, YOUR HOME」bandcampにて配信中。15分ノンストップのインスト曲。無料試聴可。
¥500以上の投げ銭でハイレゾ含むフォーマットでダウンロードも可。
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MUSIC AT HOME
— 新生音楽(シンライブ)の情報発信部 (@SINLIVE_info) April 12, 2020
皆様へ今回はステキなプレゼントご用意しております。https://t.co/mmqxKEMxKG
今回のアートワークを担当してくださった、中内友紀恵さんhttps://t.co/ESgUbyl5ye による書き下ろし。
特製記念壁紙でございます↓↓↓#新生音楽 #シンライブ #sinlive #MUSIC_AT_HOME pic.twitter.com/hFEbAMUnYa
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