【映画感想】ショウタイム7 テレビマンたちの狂気と真実への執念
報道番組ショウタイム7は視聴者参加型の生放送回の真っ最中。そんなときに同チャンネル裏番組のラジオ放送中に1本の爆破予告電話がかかってきた……。
まず感想なんですが、これはちゃめちゃに面白かったです。報道番組としても、映画としても。
まずこの映画、2つの構成でできています。映画本編と、ショウタイム7という報道番組と。
このショウタイム7という番組、視聴者参加型の報道番組なんですが、どうやら昔は平成中期にあったようなアナウンサーがズバズバ切り込んでいく過激な報道番組だったことが示唆されています。バンキシャ!とかミヤネ屋をちょっと過激にしたようなかんじのイメージかな?
担当キャスターとアナウンサーは若手の男女(竜星涼とめるる演)の2人。
そして裏番組のラジオパーソナリティーをしている阿部寛演じる折本。この折本のラジオに爆破予告電話がかかってくるところから話がはじまります。しかしこの折本、まあ私たちが想像するようなテレビマンの悪いとこ詰めたような昭和の男、平成のテレビマンなのである!視聴率取れるぞ!とか言い出すわけですね。ここでもう感想が「おいおいおいどうすんだこれ早く警察……!」となるわけです。もうどうなるのか気になって気になって、いつ警察がくるのか気になって気になって。
大前提として、私たち観客は報道番組の視聴者なわけです。なので冒頭の数分で、さっきまで映画を見ていたのに報道番組が始まったらまるで映画ではなく報道番組を見ているような画面構成になる。これがもう没入感抜群なんですね。事件の目撃者になり、一視聴者になる。とにかく切り込み系報道番組としての番組構成がめちゃ上手いのでこっちまでワクワクするんですね。架空の番組を見て。
映画の構成としてもめちゃめちゃ上手いし、報道番組もめちゃめちゃ面白く作ってる。
そして阿部寛の圧倒的な演技力。言葉一つ一つの抑揚が完全に計算しつくされてる。テレビに写ってるときの表情がほぼ変わらない。そしてカメラ目線のときの目力。ゾクゾクしました。阿部寛、すごい。
以下がっつりネタバレありの感想です。
まず、これを見て私が最後に思ったのが「イカれてんな」です。そう、犯人が最後に放った言葉。イカれてる。テレビのためにここまでやる?自分の命までエンタメにする?これが「楽しい」?圧倒的に感性が違う。これテレビに関わってる人の感想も聞きたいな……。
とはいえ登場人物のほとんどが主人公折本と同じ熱量でテレビやってるんです。なのでめるる演じるアナウンサーの放った「ドン引きなんですけど」とか「たかがテレビじゃん!」が空虚に聞こえる。そう、このアナウンサー、恐らく現代の若者の代弁者的な立ち位置なんです。現代の若者、そもそもテレビ持ってなかったり、配信見るから別にテレビとか見ないし……みたいな人、とても多いです。そう考えるとめるるをキャスティングしたのはとても妥当というか、うまいキャスティングだな、と思いました。
阿部寛演じる折本も、まあ狂ってます。警察に連絡しようとしてスクープだと思ってやめたり、テロを番組に返り咲くチャンスだと言い放ったり。爆破テロ起きてんねんぞ!視聴率とか言ってる場合じゃないぞ!!とか最初は思うんですが、見てるこっちがだんだん飲み込まれていくんですね。だって本当に面白いんですよ。折本と犯人が電話越しにずっと話を繰り広げるんですが、それだけなのにずっと面白い。そして絶妙なタイミングで挟まる視聴者投票。思わずわたしもリモコン押したくなりました。これ何がすごいかって、折本は台本無しでやってるんですよね。これだけで折本の手腕と狂気が表現されてる。視聴率の取り方をわかっていて、数字のためには命の危険すら犯す。シンプルに怖いです。
そしてラストシーンのあれ。自分の生死を視聴者に投票させる。背後でぼやけてたけど、あれDIEが95%でしたよね。すると徐にインカムを耳につけ、爆破スイッチをいれて視聴者に挨拶をして番組が終わる。
あれ、爆発しないはずですよね。音が鳴るだけで。でもああすれば視聴率が取れるし話題になると思ってやっている。狂ってますよ。でももうあれが番組の締め方として最高の演出であることは確かに、確かにそうで。頭抱えてしまいました。
そして真面目で清廉潔白に見える竜星涼演じる安積も、自分にだけたれ込みがあったと知ると鬼の首を取ったかのようにイキイキしはじめて、本当かわからない画像の証拠をテレビに突きつけて折本を追及しはじめてしまう。おまえもそっち側かい!てなっちゃいましたね。
そして現地キャスター、プロデューサー、音響さん。直接は表現されていないんですが、興奮が見てわかるんです。生死の境にいる緊迫と、それに比例し伸びていく数字への熱に浮かされてるような興奮と。こっちに伝染してくるよう。(ただアナウンサーだけはドン引きしているっていうコントラスト)
おまけに映画のほうのラスト。総理のあんな映像が流れて大スキャンダルなのに、海外のテロの速報が流れてもうみんなの興味はそっちにいってしまう。
どこかの誰かの危機も事件も、情報としてエンタメとして消費してしまう。私たちもまた共犯者なのかもしれない。そう思わせるような映画でした。