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読書感想文:凍月/グレッグ・ベア

 「凍月」
グレッグ・ベアの凍月が手元に届いていた。のを忘れていた。(2006/8の話だ)
別に新しい作品ではない。

物語そのものは以前読んだことがある。月に冷凍頭部を持ち込む話だ。
今回改めて読んで、政治とSFの乖離と言うのを再び思った。
日本版の序文に、ベアは、SF作家というものの純真、というか、政治への無関心、或いは政治への理想のあまり一切の政治談議を阻もうとする人々について言及している。
私はこれはSFに限ったことではなく、知識人と呼ばれるものについて、日本でもあり得る現象だと思う。一度も投票したことがなく、自分の政治的無知をすら自分が汚濁にまみれていないような表現であらわす人々、政治に関わること、権力について語ることを忌むべきものとして語る人々、だが実際は、私たちの生活に政治と権力に切り離して考えられるところなどないのだと言うベアの論理に私は共感してしまった。
してしまったというのは控えめな表現で、した、と言う方が正しいのかもしれない。
ベアは、SFの主人公はいつも、権力とは無縁の場所にいる弱者であると指摘する、私もそれが正しいと思う、そしてベアが述べる責任と権力を備えた人物を選ぶことが多いと言う部分に、何故私が彼の作品に惹かれるのか、その理由の一端を見た。
それが魅力のすべてではない、だが、「指導者の任務はダーティなものだ。が、だれかがやらなくてはならない。たとえ彼もしくは彼女の最善を求めたにもかかわらず、大地に屍が砕け散り、引き裂かれた魂が彷徨う結末になろうとも。」と言う文章は、本編に負けず劣らず魅力的だ。

SFの話とずれてきて、「凍月」そのものについては相変わらず言及不足。
しかし私はグレッグ・ベアの作品と意見がやっぱり好きだよ。 

(2006/8 当時の感想を読んで、なるほどなあと思う部分も多くある。とりあえずそのまま出す)


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高梨 蓮
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